埼玉新聞

 

「100万回死んだねこ」が1位に 埼玉・高校図書館の司書が選ぶイチオシ本、面白本と取られがち…実は

  • 1位に選出された「100万回死んだねこ―」の表紙

  • 桜図書館では展示コーナーに、「イチオシ本2021」のパンフレットを配置。ベストテンの本は人気で、いずれも貸し出し中だった=19日午後、さいたま市桜区道場4丁目

 「埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本2021」が18日、発表された。本の専門家が高校生たちに多くの本を読んでもらいたいと、投票して選んだベストテン。1位に決まったのは、「100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集」(福井県立図書館著・編集、講談社)で、司書の仕事や図書館の楽しさを伝える内容になっている。

 20年11月~21年10月までに出版された本を対象に、県内の高校図書館司書、私立専任司書教諭120人が、ポイントを付けて選んだ197タイトルから順位を決定した。

 「100万回死んだねこ―」は、福井県立図書館がホームページ上に掲載していた「覚え違いタイトル集」を書籍化。「おい桐島、お前部活やめるのか?」「下町のロボット」「人生が片付くときめきの魔法」「八月の蝉」など覚え違いの事例のほか、司書の仕事を紹介している。

 司書の重要な仕事にレファレンス(参考調査)サービスがある。図書館利用者の求めに、情報提供や必要な資料を検索したり、回答したりするもので、覚え違いタイトル集はここから生まれた。書籍化はレファレンスを知ってもらうことも目的だという。

 福井県立図書館は「1位と聞いて大変吃驚(びっくり)しています。高校生の皆さんは、毎日忙しくてゆっくり本を読む余裕もあまりないかもしれませんが、この本を読んで『図書館って実は楽しい場所なんだ』と知ってもらえると嬉(うれ)しいです」とメッセージを寄せている。

 実行委員会委員長で県立浦和第一女子高校図書館司書の木下通子さん(57)は「今年のイチオシ本ベストテンは、小説とノンフィクションが5作ずつ。1位の『100万回死んだねこ―』は、面白本と取られがちですが、司書の仕事であるレファレンスを一般の人に知っていただくきっかけになる本だと思います」と話していた。

 19日からイチオシ本フェアが、県内の87公共図書館、大学図書館、50書店、県庁県民案内室などで開かれ、パンフレットの配布、書籍販売や展示を行う。さいたま市の桜図書館によると、「100万回死んだねこ―」は人気作品で、市として11冊を所有しているが、貸し出し予約は378件に上る。

■県内の高校司書イチオシ本10傑

(1)「100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集」(福井県立図書館著・編集、講談社)

(2)「スマホ脳」(アンデシュ・ハンセン著、久山葉子翻訳、新潮社)

(3)「女の子はどう生きるか」(上野千鶴子著、岩波書店)

(4)「お探し物は図書室まで」(青山美智子著、ポプラ社)

(5)「マンガでわかる LGBTQ+」(パレットーク著、ケイカ著・イラスト、講談社)

(5)「ブラザーズ・ブラジャー」(佐原ひかり著、河出書房新社)

(7)「スモールワールズ」(一穂ミチ著、講談社)

(8)「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」(川内有緒著、集英社インターナショナル)

(9)「六人の嘘(うそ)つきな大学生」(浅倉秋成著、KADOKAWA)

(10)「エレジーは流れない」(三浦しをん著、双葉社)

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