埼玉新聞

 

トンガ大規模噴火から1週間、元ラグビー日本代表が埼玉・熊谷から支援へ 古巣・埼玉パナも募金活動を検討

  • 家族の無事を確認し、今後は支援活動に力を注ぐ元ラグビー日本代表のラトゥ・ウィリアム志南利さん=熊谷市の自宅

  • 津波の被害を受けた首都ヌクアロファ(ラトゥ・ウィリアム志南利さん提供)

 南太平洋トンガ沖で起きた海底火山の大規模噴火は22日、発生から1週間を迎える。少しずつ現地の様子が報じられるようになったが、被害の全容は明らかになっていない。現地で暮らす家族の身を案じていたトンガ出身の元ラグビー日本代表ラトゥ・ウィリアム志南利(しなり)さん(56)=熊谷市在住=は20日にようやく無事を確認し、「本当によかった」と安堵(あんど)した。今後は支援活動に力を注ぐという。

 ラトゥさんは1985年に来日。大東文化大学で「トンガ旋風」を巻き起こし、大学選手権の2回の優勝に貢献した。卒業後は三洋電機(現埼玉パナソニックワイルドナイツ)で活躍。大学在学中から日本代表に選ばれ、ワールドカップ(W杯)にも3大会連続で出場した。現役引退後は大東大で監督も務めた。

 トンガは約170の島から成り、36島に人が定住し、人口は約10万7千人。ラトゥさんの弟妹4人とその家族も住んでいたが、15日から連絡が取れなくなった。噴火前には会員制交流サイト(SNS)のフェイスブックを使い家族でやりとりをしていて、噴火直後は大きな爆発音がしたことや津波の様子が投稿されたが、「それからは全く連絡が取れなくなり、非常に心配していた」と振り返った。

 トンガから遠く離れた日本やペルーなどにも津波が押し寄せるほど大規模な噴火に、「まさかこんなことになるとは思わず、(現地は)どうなっているのか」と不安を募らせた。家族の無事は確認できたものの、トンガでは各家庭で雨水をためて使うのが一般的。降り積もった火山灰で水が汚染され、飲料水が不足していることも心配だという。

 ラクビー界を中心に日本とトンガはゆかりが深い。在日トンガ人に安心して暮らしてもらうため、ラトゥさんはさまざまな情報を共有できる機会とプラットフォームを提供することを目的に昨年、熊谷市にNPO法人日本トンガ友好協会を設立。日本とトンガ両国の市民が地域で直接触れ合い、互いの文化やスポーツ、伝統行事などの理解を深めながら、相互の交流を促進し国際親善に寄与することを目指している。

 災害支援に協力したいという申し出が相次ぎ、同協会は専用の銀行口座を開設し、義援金を集めていく。また日本ラグビー協会も災害支援を行う方針を決めたほか、トンガ出身者も多い古巣の埼玉パナソニックは、23日に熊谷ラグビー場で開催予定のリーグワンの横浜キヤノンイーグルス戦で、募金活動を実施することも検討しているという。

 ラトゥさんは「ラグビー関係者のつながりは強い。本当にありがたい」と感謝の言葉を口にした。

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