埼玉新聞

 

「1強」政治の是非 衆院選で自民安定、野党共闘は議席増ならず不発 維新の躍進など、新しい動きも

  • 県内入りし、公認候補の応援演説をする自民党総裁の岸田文雄首相(中央)=10月30日午前、東松山市内

 10月31日投開票の衆院選は県内15小選挙区のうち前回から1議席減らしたものの、自民が12選挙区で勝利した。比例復活と合わせ、小選挙区立候補の15人全員が議席を得た。立民、共産など野党は9選挙区で事実上の統一候補を擁立したが、効果は限定的で3議席にとどまった。

 4年ぶりの衆院選は、新型コロナウイルス対策や格差是正を含む経済対策、安倍晋三、菅義偉と約9年にわたって続いた「自民1強」政治の是非などが争点となった。

 「1強」とも言われた自民だったが「桜を見る会」に関する国会虚偽答弁、森友学園問題を巡る公文書改ざん問題、後手に回った新型コロナウイルス対策など、追い風は吹いていなかった。対して野党は「政権選択」の選挙であることを強調。9月初めには立民、共産、社民、れいわの代表が共通政策を打ち出し、各選挙区で事実上の候補者調整を行うなど、打倒与党へ向けた動きを加速させた。

 「忘れてはならないのは逆風となった2009年の衆院選。私も含め誰一人、小選挙区で当選を果たせなかった。風を受けやすい、無党派層が多いのがこの埼玉県」。自民県連会長の柴山昌彦は公示前の10月16日、さいたま市内で行った決起大会で、強い言葉で各陣営を引き締めた。

 自民は今回、7区で元県議の中野英幸が、10区では引退した山口泰明の次男・晋が新人ながら選挙区で勝利。党幹部も次々と県内入りし、総力を挙げた選挙戦を繰り広げた。

 「北関東3議席奪還」を掲げた公明は、比例北関東ブロックで82万票余りを集め、元職の輿水恵一が返り咲いた。公明県本部は自民の小選挙区候補者15人全員を一斉に推薦。これに応えるよう、自民候補も街頭演説で「比例は公明」と呼び掛け、自民、公明候補が協力して活動を展開した。

 9選挙区で事実上の野党統一候補で臨んだ野党は、いずれも立民で党代表だった5区の枝野幸男が10選、6区の大島敦が8選を果たし、12区では森田俊和が初めて小選挙区を制した。

 今回の野党共闘は県内政界にどのような結果をもたらしたのか。旧立民、旧希望候補が5、6区で勝ち、さらに3、7、12区で比例復活。比例単独と合わせ6議席を獲得した前回から、今回は1議席減らした。

 選挙後、共産関係者は「共闘の効果は表れた。多くの小選挙区で接戦に持ち込めた」と効果を強調するが、獲得議席だけを見るならば、自民の「牙城」を大きく崩すには至らなかった。柴山県連会長は「野党の一本化に対する批判もあった」とし、結果的に野党共闘は不発であったとした。

 「共闘」に参加しなかった国民民主は14区で比例復活し議席獲得。全国的に飛躍した日本維新の会は県内の比例票で33万票を集めるなど、2、15区で比例復活して初当選し、県内政界に新たな勢力を築く足掛かりを得た。自民や公明、あるいは立民、共産などとは異なる「受け皿」を求めている有権者がいることを印象づけた。

 県選管によると、今回の県内投票率は過去最低だった前回を2・53ポイントを上回る53・97%。わずかに上向いたが低水準にとどまっており、国民が直面する課題を解決するため、政策を広く浸透させるのであれば、与野党を超え、多くの県民が選挙や政治に参加する仕組み作りに真剣に取り組む必要がある。=敬称略

■野党共闘

 第49回衆院選では立憲民主党、共産党など野党が協力し事実上、小選挙区で候補者を一本化。反与党勢力を結集して臨んだ。しかし、立民は公示前の110から96議席に、共産は12から10議席に減らすなど、議席増には結びつかなかった。一方で維新が公示前の11から41議席へと大きく躍進するなど、新しい動きも見られた。

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