埼玉新聞

 

「本当にありがたい」埼玉・伊奈のこども食堂、食事から心と体をケア 食生活乱れ、体調崩した看護師が開始

  • 子どもたちにお菓子を渡す石窪さん=伊奈町学園の伊奈こども食堂

 伊奈町で毎月第1土曜日に開催している「伊奈こども食堂」は、看護師の石窪豊子さん(49)が今年6月に開始した。「食を通じてあらゆる世代にアプローチしたい」とひとり親家庭や生活困窮者だけでなく、子どもから高齢者まで分け隔てなく受け入れている。看護師経験を生かして健康管理にも留意し、地域住民に喜ばれている。

 石窪さんは看護師として大学病院やがんセンターなどで働いてきた。患者と接する中で高血圧や糖尿病など生活習慣病の原因は、日常の食事の偏りにあると気付き、「毎日の食事を見直してもらうと症状が少なからず改善した」という。

 2011年、医師で夫の力さんが伊奈町でクリニックを開業。看護師と病院の事務を受け持ちながら出産、育児も重なった。多忙から自身の食生活が乱れ体調を崩したこともあり、食事の大切さを実感。薬膳と酒かすを中心にした料理教室「Beets Kitchen」をクリニック近くに開設した。薬膳は体調や季節に合わせた食事。石窪さんは、旬の食材を生かしたシンプルな調理法で彩りや食感など五感で楽しみながら健康寿命を延ばす食習慣を提唱している。

 料理教室を営む中、虐待や貧困で苦しむ子どもたちのために自分ができることは何かと考え、子ども食堂を始めた。「20年後、3人に1人は65歳以上になる。その高齢者を支える子どもたちの食生活こそ大切なのでは」

 子ども食堂では「今日は元気ないかな?」「体調はどうかな?」と利用者をさりげなく観察。目配りしつつも「プライバシーは尊重し、あまり踏み込まないようにして不足しているものを補いたい。健康に関するアドバイスをしたり、食事に限らず心と体のケアもできれば」と話す。ボランティアで料理教室の生徒や栄養指導をする管理栄養士、元保育士らも協力している。

 提供するのは手作り弁当(高校生以上300円、中学生以下100円、ひとり親、障害者50円)のほか、地元農家のコメや野菜、レトルト食品、お菓子など。子どもたち用に工作や輪投げなど小さな遊びスペースも。イベントも随時開催。ボランティアによる婚活相談、不登校相談なども行う(予約制)。

 今月6日の子ども食堂に訪れた介護ヘルパーの永島めぐみさん(50)は「毎回本当にありがたい。ひとり親なのでとても助かる。食材は冷凍したり、ストックしたりして買い物に行かなくても済む。こうしてお世話になったことは息子も忘れないと思う」と話し、長男の充真君(6)に笑顔を向けた。

 石窪さんは「子どもも高齢者も障害のある人も、一緒に生きていける世の中をつくりたい。地元の人たちと共に子ども食堂を盛り上げ、地域の活性化に取り組みたい」と意気込む。

 「伊奈こども食堂」は伊奈町学園2の196の5。次回開催は12月4日午前11時から正午。問い合わせは、石窪さん(電話080・6428・8356)へ。

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