埼玉新聞

 

<衆院選>埼玉の終盤情勢、6~10区まとめ 与野党で幹部クラス続々 大物議員の人脈バックに拡大も

  • 衆院選、埼玉の終盤情勢

 31日に投開票される衆院選で、埼玉県内15小選挙区の終盤情勢を探った。約3割の有権者が投票先を決めておらず、終盤の動き次第で情勢は変わる可能性がある。

■6区、大島が8選へ手応え

大島  敦 64☆立 前(7)

中根 一幸 52☆自 前(4)

 野党共闘で臨んでいる立民の大島が野党支持層に幅広く浸透し、8選へ向けてリード。自民の中根が懸命に追い掛けている。

 大島は、過去の衆院選で安定した票を獲得してきた鴻巣、北本で相変わらず強い。大票田の上尾も小まめに回り、無党派層からの支持も狙う。有権者に身近に感じてもらうため、選挙カーでも自身がマイクを握ってアピール。前回の衆院選で共産候補が獲得した約2万9千票をどこまで取り込めるか。「安心はできないが、手応えがある」と陣営。「悔いのない戦いをしたい」と、全力投球で終盤に挑む。

 小選挙区での勝利を目指す中根は、今回も上尾に選挙事務所、地元鴻巣には後援会事務所を構えた。組織の引き締めを図りながら「未来に希望を」「日常を取り戻す」を掲げて活動。元首相の安倍晋三ら党の幹部クラスが続々と応援に駆け付け、太いパイプを見せつける。会員制交流サイト(SNS)を活用し子育て世代や若年層への浸透にも力を入れ、支持拡大を狙う。公明支持層をまとめ切れるかが鍵になりそう。

※6区=鴻巣市(旧鴻巣市、旧吹上町域)、上尾市、桶川市、北本市、伊奈町

■7区、小宮山と中野が拮抗

小宮山泰子 56☆立 前(6)

伊勢田享子 44☆維 新

中野 英幸 60☆自 新

 立民の小宮山と自民の中野の大激戦が続いている。2人を維新の伊勢田が追う。

 小宮山、中野ともに大票田の川越が地盤。小宮山は野党統一候補として臨んでいるが、かつての自民重鎮で郵政相などを務めた重四郎から続く一定の保守層にも支えられている。川越では中野と保守層を奪い合っており、その分、ふじみ野などで共産支持層をどこまで固められるか。無党派層の取り込みにも余念がなく、陣営は「(終盤は)今の政治に疑問を感じている無党派を意識したい」という。

 中野は組織力をフル稼働させた戦いを展開している。企業の朝礼に顔を出したり、各種団体、地域の支援者回りに時間を割いてきた。自民支持層を固めながら、公明支持層にも浸透を図っている。終盤戦は街頭などでマイクを握る時間をこれまで以上に増やし、ラストスパートの構え。陣営は「組織を挙げ、死に物狂いでやっていく」と票の積み上げに全力を傾ける。

 伊勢田は、立候補表明が解散直前と出遅れ、知名度が浸透しきれていない。「自民でも立憲・共産でもない第三の選択肢に」と、支持の掘り起こしに懸命だ。

※7区=川越市、富士見市、ふじみ野市(旧上福岡市域)

■8区、柴山が7期目へ優勢

柴山 昌彦 55☆自 前(6)

小野塚勝俊 49 無 元(1)

 前回候補者を擁立した共産が見送ったことで自民の柴山と無所属の小野塚の一騎打ちとなった。柴山が先行し、小野塚が追い掛ける展開になっている。

 柴山は選挙区内の首長や保守系県議、市議、業界団体の支持を得て、分厚い選挙運動を展開する。序盤は官房長官の松野博一が応援に入り、支持拡大を呼び掛けた。前回は柴山が9万2952票、小野塚が6万1501票、共産新人が3万3204票を獲得。共産新人が獲得した票が小野塚に全て流れると柴山を上回る。柴山は「選挙は足し算ではない」としながらも、街頭演説や小集会で自公政権の実績をアピールし、さらなる票の上積みを狙う。

 小野塚は立民に公認申請をしていたが、今回は無所属での出馬となった。特定の政党の支援は受けないが事実上の野党統一候補として、幅広い支持を呼び掛ける。演説ではアベノミクスで広がった格差是正や所沢市への保健所の必要性を訴える。9年間の浪人生活では地道に駅立ち。どこまで反自民や無党派層への浸透を図れるかが鍵。

※8区=所沢市、ふじみ野市(旧大井町域)、三芳町

■9区、大塚が手堅くリード

神田 三春 67 共 新

大塚  拓 48☆自 前(4)

杉村 慎治 45☆立 新

 前回と同じ顔触れで自民の大塚が手堅い選挙活動でリードし、立民の杉村、共産の神田が追い掛けている。

 大塚は地元首長や保守系議員の支援を受けて盤石の態勢で臨んでいる。選挙期間中は駅頭で通勤、通学客へ4年間の自公政権の実績をアピールするほか、選挙区内の商業施設を小まめに回り、自民支持層以外にも支持を呼び掛ける。中盤には経済産業相の萩生田光一が応援に入り、終盤戦へ向け追い込みを掛けた。

 杉村は「あらゆる格差を是正し、一億総中流社会を取り戻す」と政権交代を訴える。駅頭では党の政権公約をチラシと共に配布し、支持を呼び掛ける。共産が擁立したことで、野党候補一本化は実現しなかったが立民支持層のみならず、地道に選挙区内の駅や商業施設を回り、無党派層への食い込みを狙う。

 神田は「コロナ禍におけるいのち、暮らし最優先」「ジェンダー平等の日本」「憲法9条生かした外交」を訴える。参院議員の伊藤岳や共産市議らと共に街頭演説に立ち、共産支持層以外にも支援を呼び掛ける。

※9区=飯能市、狭山市、入間市、日高市、毛呂山町、越生町

■10区、山口と坂本が競り合う

坂本祐之輔 66☆立 元(2)

山口  晋 38☆自 新

 自民の山口と立民の坂本が一騎打ちで、激しく競り合っている。接戦のまま投票日を迎える可能性が高い。

 山口は今年7月、引退表明した党の要職を務めた父・山口泰明の後釜として、公募の末に後継候補となった。知名度にやや不安はあったが、衆院議員を7期務めた泰明の組織や人脈をバックに、選挙区内10市町の後援会をフル稼働させ、連立を組む公明と各種団体との組織戦を展開。手堅く票を固めている。「若さと即戦力」をアピールし、自民、公明以外の無党派層への食い込みも狙う。

 坂本は過去の衆院選は維新、希望から出馬。今回は野党統一候補として臨んでおり、立民支持層を固めながら共産支持層への浸透を図ってきた。東松山市長を4期務めた経験から、同市での知名度は高く、坂本系の県議、市議も擁する。比例復活して国政も経験しており、「10区から政治を変える、政権を変えるのろしを上げよう」と訴える。無党派層をどこまで掘り起こせるかが焦点となる。

 公示前から両陣営とも党の幹部が駆け付け、てこ入れしている。

※10区=東松山市、坂戸市、鶴ケ島市、小川町、川島町、ときがわ町、滑川町、鳩山町、吉見町、嵐山町

【表記説明】候補者は届け出順。敬称略。年齢は投票日の10月31日時点での満年齢。☆は比例北関東ブロックとの重複立候補を表す。党派の略称は、自由民主党=自、立憲民主党=立、公明党=公、日本共産党=共、日本維新の会=維、国民民主党=国、NHKと裁判している党弁護士法72条違反で=N、無所属=無。前、元、新は前職、元職、新人の略。(数字)は当選回数。

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