埼玉新聞

 

県内初の公立夜間中学・川口市立芝西中学校陽春分校で入学式 新入生は外国人も含め77人「心配しないで」

  • 「年齢も国籍も違いますが、夢に向かって仲良くやっていきましょう」と生徒代表の言葉を述べるナベダ・セバスチャンさん=16日、川口市立芝西中学校陽春分校

  • 一人一人名前を呼ばれて起立する新入生たち

 県内初の公立夜間中学校となる川口市立芝西中学校陽春分校の初めての入学式が16日、同市並木の同校で行われた。新入生は10代から80代までの日本人30人と海外13カ国47人の計77人(男性30人、女性47人)。式典で杉田明校長(59)は「心配しないでください。年齢や国籍、多くの垣根を取り払い、大きな花を咲かせることができるよう全力でサポートします」と新入生に語り掛けた。

 式典では君が代と、サトウハチロー作詞・團伊玖磨作曲の川口市民歌を合唱。生徒たちは一人一人名前を呼ばれ、起立して一礼した。杉田校長は「77人の皆さんの入学を承認します」と宣言。「県内初の公立夜間中学がスタートします。でも、始まったばかりで何もない。明るく楽しい学校をみんなでつくりましょう」と話した。

 新入生を代表してペルー国籍のナベダ・セバスチャンさん(18)が「私たちはみんなそれぞれ大きな夢や希望を持って入学しました。私はこれまで中学校で十分な勉強をすることができませんでした。陽春分校でもう一度勉強したい。学校では数学を頑張って勉強したい。将来は料理の専門学校へ進みたい」と述べた。

 セバスチャンさんは、開校準備を進めた杉田校長らへ感謝の言葉を述べ、さらに「一緒に入学した生徒の皆さん、年齢も国籍も違いますが、それぞれの夢に向かって仲良くやっていきましょう」と話した。

 式典の後、生徒たちはそれぞれの教室へ。セバスチャンさんは1年1組。担任教諭の雲出智子さん(55)は初めてのホームルームで「国籍も年齢も違う皆さんといろいろな交流ができることが楽しみ。今日、スタートしたことを大事にしていきましょう」と話した。

 雲出さんは社会科担当で「数十年前に私が初任地の学校にいるようなわくわくした気分です」と語った。

 国籍も違う生徒たちにとって、日本語の習得が大きな課題となる。同校で日本語を教えるのは、今年3月まで市立十二月田小学校の校長だった竹内まゆみさん(60)。日本語講師の資格を間もなく取得する。

 「とてもやりがいのある仕事だと思う。ほかの先生たちもみんなベテラン。この学校で自分をリセットしたいと思っている人たちです」と竹内さんは抱負を熱く語った。

 新入生たちの後ろの席には、市内で川口自主夜間中学を開き、県に公立夜間中学の開校を求めて34年間運動してきた人たちが並んだ。

 川口自主夜間中の創設者の一人、元高校教諭の江藤善章さん(69)は「この日が来るとは、夢だったので泣けてきた。運動を続ける中で亡くなった仲間のことも思い出した」と話した。埼玉に夜間中学を作る会代表で、元都庁職員の野川義秋さん(70)は「年齢も国籍も多様でこのように大勢の人たちが元気に入学されたのを見て感動した」と語った。

 【メモ】外国籍の新入生の国別内訳は中国が最多の21人で、ベトナム6人、韓国4人。ネパール、トルコ、アフガニスタン、ブラジル、ペルー、ミャンマーが各2人。タイ、パキスタン、フィリピン、台湾が各1人。

 川口市外の新入生の居住地は、さいたま市が6人。蕨と草加市は各4人。戸田と三郷市各3人。八潮と上尾市各2人。春日部や新座、久喜市など県内から幅広く通うほか、日高や羽生市、寄居町など遠方から通う生徒もいる。

 年齢別には10代が21人で最も多く、20代12人、30代7人、40代17人、50代6人、60代8人、70代5人、80代1人となっている。

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