審査総評

35回目を迎えたさいたま森林フォトコンテストは、応募点数が438点にのぼり、昨年の応募点数を大きく上回った。関係者からの呼びかけにより、高校生からの応募も多数あった。素晴らしい写真を撮影し、ご応募いただいた方々に心より感謝申し上げたい。

今年度の作品は、森林や公園を訪れた際に感動した光景や、入念に準備し撮影した風景など、埼玉の四季折々の自然が生き生きと表現されている。初めてコンテストに参加した若者からベテランまで、応募作品それぞれから撮影者の発見や感動が伝わってきて、例年以上に入賞作品の選定が難しいコンテストとなった。応募作品には、森林の魅力を生かした健康、観光、教育などの分野での活動を捉えたものが散見された。そのような新たな視点で森林の価値を捉えた作品に出会えることがコンテスト審査の楽しみでもある。

今回受賞された作品のような光景に出会うために森林に出かけ、親しんでいただき、発見や感動を撮影し、ぜひ次回のコンテストにご応募いただきたい。また本コンテストの重要なテーマの一つである「林業への理解を深めること」に関しても次回以降の応募増に期待したい。

審査委員長 本永 剛士(一般社団法人 全国林業改良普及協会 編集制作部担当部長)

優秀作品

特選・埼玉県知事賞

「みかん日和」

「みかん日和」

撮影地:寄居町

撮影者:光田 あいさん(鴻巣市)

初めてのみかん狩り。みかん農園で、もぎたてのみかんを手にした子どもたちのはじける笑顔を捉えている。光を透かした色鮮やかな葉っぱ。たわわに実るみかんに光が回り込んで輝いている。緑と橙を背景に、子どもたちの目線に合わせたローポジションでの撮影。光の捉え方や色彩バランス、構図の工夫が高いレベルで調和して、主題がより印象的に浮かび上がっている。子どもたちの自然な表情や仕草を高度な技術で記録した、完成度の高い一枚である。

準特選・埼玉県緑化推進委員会賞

「水源地を守る森」

「水源地を守る森」

撮影地:ときがわ町

撮影者:髙荷 秀男さん(小川町)

スギ林の斜面の連続した堰堤。水や土砂が安全に流れるように水路を固定し、川底や川岸が削られるのを防ぐための流路工という構造物である。この流路工は、大正・昭和初期当時の砂防工法を遺すものだという。撮影者は、長く水源を守り続けてきた流路工の古式蒼然たるたたずまいを、構図と石組みの表情、水流の捉え方によって見事に表現している。

準特選・埼玉新聞社賞

「棟上げの日」

「棟上げの日」

撮影地:寄居町

撮影者:武内 道直さん(寄居町)

新居の棟上げ式。木組みを見せた新居を背に、手形を押した部材を持って記念撮影。ハレの日の施主の喜びを捉えた作品である。被写体の表情には撮影者との信頼関係があらわれていて、写真全体の魅力につながっている。記念写真は、後から見返したときに、撮影した当時の状況や感情を蘇らせる力がある。作品は10年後、20年後に、お二人が思い出を語れる一枚となった。

優秀賞・埼玉りそな銀行賞

「それぞれの道」

「それぞれの道」

撮影地:朝霞市

撮影者:黒木 智博さん(朝霞市)

「母がよくうちの兄弟にそっくりと言っていたのを思いだし撮った」と撮影者のコメントにある。3本に分岐した幹が大きく成長し、それぞれの幹から枝を思い思いの方向へ伸ばし、葉を空いっぱいに展開している。子の将来の幸せを願う親の愛を受け止めた撮影者のメッセージが、しっかりと伝わってくる作品だ。

優秀賞・埼玉県治山林道協会賞

「作業道の姿」

「作業道の姿」

撮影地:飯能市

撮影者:吉田 幸子さん(飯能市)

所有林に開設した作業道の仕上がり確認に行った際に撮影した作品。すくすく成長した林の中の作業道を地下足袋で踏みしめ歩く姿がしっかり捉えられている。山主が山林をこまめに見回り(足跡を残し)、周密な管理をすることが何よりも山林を健全に育てるという意味の「山林は主の足跡よき肥料」という林業のことわざが思い浮かぶ。

優秀賞・日本製紙賞

「栃本の春」

「栃本の春」

撮影地:秩父市

撮影者:畠山 敏郎さん(東京都小平市)

奥秩父の山並みに挟まれた集落の春の訪れを捉えた作品。「土地の人の自然を大切にする気持ちが伝わりました」と撮影者は受け止めた。手前の集落と畑、その周りの色彩賑やかな花木が春の訪れを告げている。対岸の斜面は奥山に向かって新緑のグラデーションとなり、白い花が点在している。サクラだろうか。春の溢れる季節感を捉えた作品だ。

優秀賞・ダイドードリンコ賞

「峠道」

「峠道」

撮影地:皆野町

撮影者:関根 伊佐男さん(皆野町)

峠へと続く道。撮影者は雨上がりの光る道に着目した。点在する家々を縫うように続く道の両側に、スギ林や竹林、広葉樹の山が迫る。山腹の霞が作品に立体感を与えている。山々の霞の切れ間から覗く光る道と集落が屏風絵のようだ。撮影ポイントに足を運び、周到な準備と技術によってものにした作品である。

優秀賞・AGS賞

「見定める」

「見定める」

撮影地:飯能市

撮影者:山口 昇さん(入間市)

埼玉県を代表する林業地・西川林業地の原木市場(丸太市場)。「出荷を待つスギの原木の年輪を見たとき、林業の大変さが伝わってくる」と撮影者。長い年月をかけて育てられたスギが市場で価値を見定められていく。丸太を見つめる関係者を入れ込むことで、物語を感じさせる作品となっている。

佳作作品

「あじさい山」

「あじさい山」

撮影地:皆野町

撮影者:橋本 武男さん(長瀞町)

スギ林の林床に植えられた色鮮やかなアジサイ。奥行きのある構図によって、さまざまな色に咲く沢山のアジサイの広がりが表現されている。そこに通りがかった郵便配達のバイクの赤が作品のアクセントとなっている。シャッターチャンスが見事だ。偶然を生かして写真を楽しむ撮影者の遊び心が感じられる。

「ぼうけんの途中」

「ぼうけんの途中」

撮影地:入間市

撮影者:吉野 佐和子さん(入間市)

山道を奥に向かって歩く少年。冒険心と不安を抱え、五感を研ぎすませながら歩みを進める少年の一瞬の表情が捉えられている。「男の子は、長い棒を持てばどこまでも歩ける!生き物たちの息づかいを感じながらどこまでも」との思いで写した瞬間。撮影者の少年にかける思いが素直に作品から伝わってくる。

「花に誘われて」

「花に誘われて」

撮影地:さいたま市

撮影者:吉野 宏映さん(加須市)

「満開の桜に誘われてのおでかけ、母と娘の安らぎのひととき」を撮影者は捉えた。満開の桜、土手の緑、背景が暗くかつ人物に光が射すポイントに母と娘がやってきた。構図に安定感があり、シャッタータイミングも見事である。風もなく穏やかな春の日。花に誘われて散策する母娘の語らいが聞こえてくるようだ。

「光は誰かの手の先に」

「光は誰かの手の先に」

撮影地:秩父市

撮影者:坂野 康太さん(さいたま市)

モスグリーンの落ち着いた色が印象に残る作品。森林の木立から漏れる朝日が朝霧により光の筋となっている。「森に差込む光は美しいだけでなく、人の手によって守られてきた自然や時間を照らしているように感じました」。この撮影者のコメント、タイトルが加えられて、見る人の想像力を刺激する作品となった。

「高原の朝」

「高原の朝」

撮影地:東秩父村

撮影者:原田 義則さん(川島町)

柔らかな日に照らされた高原の朝。朝靄の森林が差し込む光でオレンジに染まっている。新緑、ヤマツツジの紅、ヤシオツツジのピンク…。さまざまな春の色がメルヘンチックな色彩となっている。春の季節が一斉に訪れた高原での一日の始まり。その躍動感が撮影者の感動と共に伝わってくる。

「新緑の森へようこそ」

「新緑の森へようこそ」

撮影地:北本市

撮影者:丹羽 由美子さん(さいたま市)

木々の重なり合いがアーチのようにも見える。「新緑の森へようこそ」とアーチをくぐって迎え入れられた親子が新緑の森を歩いていく。道は少しうねりながら、さらに森の奥へと続いている。アーチの濃い緑から先が新緑の森という撮影者の視点によってストーリーが生まれ、記憶に残る作品となった。

「森を渡る」

「森を渡る」

撮影地:朝霞市

撮影者:相馬 達也さん(朝霞市)

森に張られたベルト状ラインの上でバランスをとるスラックラインの一コマ。「木々に包まれた宙空でバランスをとる選手をねらいました」とは撮影者のコメント。青空と白く光る雲、輝く緑。光の使い方が美しい。安定感のある構図で、ローアングルから被写体を捉えたことで、「宙空」での浮遊感も生み出している。

「雪深々」

「雪深々」

撮影地:さいたま市

撮影者:又賀 義信さん(さいたま市)

雪が深々と降る朝、ストロボを持ち出して撮影した。近接する2本の樹木の根に着目し、背景に並木を配置して、シャッターを切った。樹形のシルエットの連続、雪で強調された根、降る雪はストロボにより淡い白丸となり、雪降る情景が絵画のように仕上がった。構図、色彩、ストロボの効果。撮影者の技術がふんだんに生かされている。

「吊り橋の花飾り」

「吊り橋の花飾り」

撮影地:小鹿野町

撮影者:関矢 昭子さん(群馬県藤岡市)

尾ノ内渓谷紅葉祭で行われる吊り橋の花飾りの一場面。ダリア園の花を摘み取り、フラワーアレンジメントを施して渓谷に飾り付けるイベントだという。撮影者もイベントに参加したのだろうか。吊り橋にダリアが飾られていく様子がしっかり記録されている。吊り橋の全景、参加者の表情など、さらにいろいろな作品も見てみたい。

「登り竜」

「登り竜」

撮影地:滑川町

撮影者:沖舘 宏さん(滑川町)

下から上までみっしりとツルに覆われた大樹。複雑に絡み、癒合しながら上方へとツルが登っている。撮影者は、ツルの下部の赤褐色が次第にスズ色へと変わる様を上手く捉え、鈍い光によってツルの生命力、迫力を表現している。メタリックな色調も相まって、金属のアート作品を見るようだ。

「夕日に染まる」

「夕日に染まる」

撮影地:皆野町

撮影者:小林 順一さん(東松山市)

夕日に照らされた天空のポピー畑。残照を浴びて花が輝く瞬間を捉えている。夕日のオレンジ、暮れゆく山々の紫のグラデーション、ポピーの赤が印象的だ。一面に咲く赤い花は、青空をバックに撮影されることも多い。夕日と山々を背景に撮影を行った撮影者の視点と発想についても賞賛したい。

「落葉の里山」

「落葉の里山」

撮影地:寄居町

撮影者:角張 洋司さん(鴻巣市)

寄居町の清流・風布川と色鮮やかな落葉を捉えた作品だ。手前の瀬の岩の上ではしっかりと落ち葉が形を見せている。落ち葉が敷き詰められ、中央から水が湧き出ているように見える箇所もある。沈んだ落ち葉が流れの透明度を強調している。どの場面を切り取るかによって伝わることが変わる。視点について考えさせられる作品だ。