審査総評

34回目を迎えたさいたま森林フォトコンテストは、応募点数391点と昨年の応募点数を上回った。素晴らしい写真を撮影、投稿してくださった方々に心より感謝申し上げたい。

さて、今年応募いただいた作品は、森林や公園を訪れた際に出会った光景や、計画を練って万全な準備のもとに撮影されたもの、過去の応募作品をステップアップさせたものなど、さまざまな視点から埼玉の四季折々の自然を捉えている。これらのバリエーション豊かな作品の中から、受賞作品はいずれも森林や緑と人間の結びつき、林業への理解を表現した、コンテストのテーマに沿った作品が選ばれた。撮影者の意欲やユニークな視点によって、埼玉の森林と人の関わりを彩り豊かに伝えてくれている。受賞作品のコメント欄を読ませていただくと、あらためて作品の奥深さ、込められた意図に気づくこともあった。最後に、本コンテストの重要なテーマの一つである、森づくりや森林の維持、管理に関わる内容の作品投稿が少なかったことは申し添えたい。テーマとして再認識していただき次回以降の応募に期待したい。

優秀作品

特選・埼玉県知事賞

「憧れの木登り」

「憧れの木登り」

撮影地:滑川町

撮影者:鈴木 篤史さん(鴻巣市)

滑川町の国営武蔵丘陵森林公園でのツリーイング体験の一コマ。樹木に専用のロープをかけての木登りは、森林内の新しいアクティビティとして注目されている。作品は、画面いっぱいに広がるケヤキの枝葉、ロープで木に登る子どもらと見守るインストラクターがバランスよく配置され、画面構成に安定感がある。タイトルの「憧れの木登り」のとおりに、木漏れ日で照らされた子どもらの姿から、冒険心、ワクワク感までが伝わってくるようだ。

準特選・埼玉県緑化推進委員会賞

「両神山とシダレザクラの共演」

「両神山とシダレザクラの共演」

撮影地:小鹿野町

撮影者:髙澤洋 次さん(横瀬町)

斜面に満開の桜、対岸に新緑の広葉樹林、正面奥に芽吹きはこれからという山。「遠景の両神山が、あたかも花見を楽しんでいるかのような印象」とは撮影者のコメント。確かに、鋸歯状の山容が特徴的で日本百名山に数えられる両神山が巨人となり、左奥の山間から桜咲く斜面を覗き込んでいるようにも見える。写真の楽しさを感じる作品。

準特選・埼玉新聞社賞

「自然の中で」

「龍神マルコ雲になる」

撮影地:さいたま市

撮影者:木野内 千夏さん(さいたま市)

見沼田んぼで自然保護活動を行うNPOが保全活動のシンボルとして毎年制作している、「龍神マルコ」。撮影に訪れた撮影者が、「あの雲、龍に見えない?」と言われ、シャッターを切ったというこの作品。緑を背景にした龍神マルコと、青空にくっきりと浮かび睨みをきかせる雲の龍神マルコ。雲との組み合わせで面白い作品ができあがった。

優秀賞・埼玉りそな銀行賞

「春を待つ」

「春を待つ」

撮影地:飯能市

撮影者:小峰 弘次さん(所沢市))

撮影地の飯能市は、埼玉県を代表する林業地・西川林業地に位置し、名称は江戸時代、用材を筏に組み、江戸に流送したことから「江戸西方の川より来る材」に由来する。撮影者は地場の歴史ある産業と春の雪を結びつけて作品とした。コメントに「出荷を待つ西川杉に雪が積もり、春を待っている様に感じながら撮りました」とある。

優秀賞・埼玉県治山林道協会賞

「偶然の光(美の山)」

「偶然の光(美の山)」

撮影地:皆野町

撮影者:橋本 武男さん(長瀞町)

作品は、秩父市と皆野町境にある蓑山山頂にある美の山公園で早朝に撮影された。朝日が雲海と色とりどりに咲くアジサイをオレンジ色に染めた瞬間をとらえている。タイトルに「偶然の光」とあるが、この時期は雨が多く、アジサイと雲海、朝日を撮影できたことは、綿密な計画のもとに得られた成果である。

優秀賞・日本製紙賞

「消えゆく面影」

「消えゆく面影」

撮影地:秩父市

撮影者:忽那 博史さん(さいたま市)

荒川の源流域にかつてあった、森林鉄道「入川森林軌道」。撮影者は軌跡を探索し、レールが残る複線区間を撮影している。森林鉄道は木材運搬が主な目的であったが、山に暮らす人の生活物資を運んだり、通学などにも使われたと聞く。先人の営みを訪ね、記録するこのような作品が、地域の新しい魅力発見の入り口ともなる。

優秀賞・ダイドードリンコ賞

「元荒川の夜桜」

「元荒川の夜桜」

撮影地:鴻巣市

撮影者:角張 洋司さん(鴻巣市)

両岸のライトアップされた桜並木と元荒川のラインが画面の奥で一点に収束する画面構成。スローシャッターの効果によって夜桜を浮かびあがらせ、同時に川面に散り落ちた花びらの軌跡で水流を現している。撮影場所を飛び石の手前としたことで、石の間を流れてくる水流の動きが写真に表情を加えている。撮影意図を見事に具現化した作品だ。

優秀賞・AGS賞

「初雪の秩父盆地」
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「初雪の秩父盆地」

撮影地:皆野町

撮影者:佐藤 常利さん(皆野町)

初雪の早朝。奥秩父の山々を始め盆地全体も真っ白になるほど雪が積もった。雪をまとった山々は日の出前に刻々と色を変化させ、街は朝靄のベールで覆われ、灯りの瞬きが透けて見える。早朝のこの時間でしか撮れないドラマチックな風景だ。撮影場所や天気予報の確認など、周到な準備によって作品が完成した。

佳作作品

「秋色」

「秋色」

撮影地:東松山市

撮影者:阿部 孝さん(鳩山町)

イチョウの落ち葉を集めて空に放り上げた瞬間の子どもらの笑顔がとらえられている。イチョウの巨木を背景に三者三様の表情やリアクションが楽しい。撮影者との関係性からか、カメラを意識しない子どもらの自然な表情が引き出されている。撮影者の狙い通りの結果が得られた作品である。

「秋の実一面の山の端」

「秋の実一面の山の端」

撮影地:秩父市

撮影者:関根 伊佐男さん(皆野町)

手前に山の暮らしを感じさせる柚子と柿、画面中央に山の斜面に建ち並ぶ民家をとらえた。果実の配色と奥山から立ち上る霧により、情感ある作品となっている。霧の中でかすむ尾根筋の連なりを見せたことで、山里の奥深さを強く感じさせる。天候が変化する難しい条件の中で、撮影意図が見事に表現された。

「故郷の山で仲間と遊ぶ」

「故郷の山で仲間と遊ぶ」

撮影地:小川町

撮影者:森脇 鏡子さん(小川町)

堂平山の草地に座る仲間と山の連なり、平野までの遠望がくっきりととらえた作品。絶景ポイントに座り込み語らう5人にとって、この場所から見る景色は特別なものなのであろう。冬枯れた広葉樹林と少し褐色を帯びたスギ林がパッチ状に続く故郷の山を前に、仲間と集う様が自然体で切り取られている。

「肩叩き」

「故肩叩き」

撮影地:狭山市

撮影者:水上貴夫さん(狭山市)

公園のベンチの2人。広々とした緑の空間に柔らかな光が差し込む。映画の回想シーンのようにも見える。撮影者のコメントには「森林浴と肩叩き。気持ちいいんでしょうな。この後はかあさんが肩叩きをやってもらうんでしょうか。うらやまし」とある。撮影者のつぶやきどおりのほのぼのとした作品だ。

「よいしょ。よいしょ。」

「よいしょ。よいしょ。」

撮影地:嵐山町

撮影者:杉田 庄治さん(嵐山町)

整備されたコナラ林の歩道。シイタケ菌を植え付けたホダ木を子どもたちが運ぶ。足下を確かめながら、1歩1歩確実に足並みを揃えて進んでいく。撮影者のコメントには「置き場まで、あと100m」とある。直向きに歩みを進める子どもらの姿に、「よいしょ。よいしょ。」と声をかけたくなる。

「よいしょ。よいしょ。」

「初雪の朝」

撮影地:秩父市

撮影者:清水 守さん(秩父市)

初雪の朝、国道140号のループ橋(雷電廿六木橋)に出向いた撮影者を雪に覆われて真っ白になった山が迎えてくれた。風もなく枝にも雪が着いたまま。絶好の撮影条件だ。ループ橋の色と山の色調がマッチしている。人工林には白い三角錐が並び、広葉樹林は綿毛が敷き詰められたようだ。雪の質感描写も素晴らしい。

「晩秋の渓」

「晩秋の渓」

撮影地:小川町

大澤 寅三さん(小川町)

前の水の流れに撮影者は注目したという。シャッター速度の調整で水流を表現し、動かない黒々とした岩を配置することで水の流れを際立たせている。勢いよく水が流れ込んだ先は鏡面のよう。そこに木々を透過した光が斜めに差し込んでいる。その光と手前の瀬の影のコントラスト。撮影者の撮影技術が存分に発揮されている。

「夏休みの棚田」

「夏休みの棚田」

撮影地:横瀬町

撮影者:谷山 まりあさん(所沢市)

棚田近くで虫取りに熱中する子どもをとらえた。手前にコスモスが咲き、奥には稲刈りが進む棚田、遠くにはセメント工場、背後には武甲山の全景が見える。インパクトある素材が詰め込まれたこの作品は、年月を経てあらためて写真を手にしたときに報道的な価値を持つ作品だと感じる。

「山里の祭日」

「山里の祭日」

撮影地:秩父市

撮影者:谷山 ゆみさん(所沢市)

花笠に獅子が3頭、祭りの法被を着た子どもたちがついて行く。祭りの行列の手前に、菜の花、幟の向こうに桜、秩父の山並みには残雪がみえる。山里の春を表現するために撮影場所を選んだ撮影者の工夫が感じられる。「山里の祭日」の構図案としては、幟を中心とするタテ位置での撮影も考えられる。

「緑映」

「緑映」

撮影地:毛呂山町町

撮影者:丹野 廣人さん(所沢市)

アーチ橋と渓流を題材にした。橋の全体は写さずに、半円の黒のシルエットで切り取ったことで、光と影が強調されている。また水面に背景の林が映り込み、緑の○ができあがっている。手前の苔生す岩とシダが加えられて、自然の中の緑の色合いや濃さが豊かに表現されている。初夏の小川の清涼感が伝わってくる作品。

「村祭り」

「村祭り」

撮影地:東秩父村

武内 道直さん(寄居町)

東秩父村八幡山神社の祭礼。大勢に曳行される笠鉾に日が射し、飾りを鮮やかに照らす。ヘアピンカーブの上り。車軸を軋ませながら曳き上げられる笠鉾。力一杯に綱を引く曳き手の表情、姿勢がとらえられている。ヘアピンカーブを撮影ポイントに選んだことで、笠鉾曳行の情景を収めることに成功している。

「錦秋の 山が見送る 旅の列」

「錦秋の 山が見送る 旅の列」

撮影地:秩父市

撮影者:齋藤 英史さん(久喜市)

彩甲斐街道出会いの丘で、錦秋に染まる山々と紅葉に映える豆焼橋に向けてシャッターを切る撮影者。遠くからの聞こえてきた排気音。隊列を組むバイクが橋を渡る瞬間をとらえた。バイクが橋いっぱいに均等に配置されている絵柄が面白い。シャッターチャンスをものにした撮影者の会心の笑みが目に浮かぶ。タイトルも秀逸。