埼玉新聞

 

<新型コロナ>感染防止効果あった久喜市の小中学校「ハイブリッド授業」…課題も 「出席停止」は理不尽

  • 分散登校でハイブリッド授業に臨む生徒ら=久喜市立鷲宮中学校

 緊急事態宣言を受け、久喜市は夏休み明け、学校と自宅で同じ授業に取り組む「ハイブリッド授業」を導入した。感染防止に効果を発揮した一方、保護者の声からは、さまざまな課題も浮き彫りになった。

■分散登校

 市はコロナ禍、オンラインを活用した学習支援を本格化。8月末からの分散登校に合わせ、子どもが学校と自宅で、同じ授業に取り組む「ハイブリッド授業」を導入した。

 市教委指導課の川島尚之さんは「感染症対策と学びの継続という視点からハイブリッド授業に取り組んだ」とする。

 多くの小中学校で1クラスの児童・生徒を2グループに分け、交互に登校。片方のグループが教室で、もう片方が自宅から同じ授業に参加する形式だ。

 分散登校の期間、クラスターや学級閉鎖はなく、感染対策として一定の効果が出た。

■保護者の声

 一方、オンライン授業の拡大により、課題がより浮き彫りになった。市PTA連合会が、市内小中10校ほどの保護者から集めた声をまとめた。

 「やっぱり家だと集中力が続かない」、「仕事はなるべく在宅に変更し付かず離れず」、「現時点では家庭、特に保護者への負担が大きく」…。

 自宅に子どもだけを残す、昼食の準備、学童との連携、仕事との両立など、親の不安や負担の声が多く上がった。先生と子どもがうまくコミュニケーションを取れていないといった指摘もあった。

 同連合会は内容を市、市教委に提出。福田泰隆会長は「先生たちの頑張りを評価する声も多い。親の立場からは多様な意見があり、ぜひ参考にしてほしい」と話している。

■受験への影響

 こうした保護者の声に配慮。感染が減少したこともあり、市は21日から通常登校に戻す。ただし感染不安やワクチン接種などの理由で登校しない場合は、オンラインで授業に参加する選択肢を残している。

 さらに教員、保護者が問題視するのは、オンラインで授業を受けたにもかかわらず、「出席停止」となる点だ。とりわけ中3生とその保護者は「登校」日数が減ることで、受験への悪影響に気をもむ。

 市立鷲宮中学校の青木真一校長は「先生と生徒が同じ授業を受けながら、出席にならないのは理不尽。納得いかないのは当たり前」と制度への不満を明かす。

 その上で教員と生徒が実際にやりとりする「オンライン授業」と、授業を一方的に見るだけの「オンライン中継」を分類すべきと、今回の「ハイブリッド授業」を振り返る。

 市は文科省、県の方針、周辺自治体との比較を考慮。今後「オンライン授業」に参加した場合、「出席」扱いにする方向で検討を進めている。

 試行錯誤の中で進むオンラインによる学習支援。青木校長は「何もやらないのが一番簡単だが、それでいいわけがない。困難な状況でも教育を止めない、子どもの学びを止めないことがなにより大切だ」と語った。

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