埼玉新聞

 

ほろ酔い気分の仏様、ひつぎから出てきて万歳三唱 でたらめなお経に会場大笑い、秩父で葬式まねる奇祭

  • 一升瓶を持ってひつぎの中に入る生き仏様役の福島康弘さん(手前左)とでたらめなお経を唱える大方丈の川島康助さん(同右)=秩父市久那の下久那公会堂

 生きている人を死者に見立てて本物そっくりの葬式を催し、災厄を笑い飛ばす奇祭「ジャランポン祭り」が10日、秩父市久那の下久那公会堂で行われた。祭りの時に鳴らす印金や太鼓、妙鉢の音から「ジャランポン祭り」といわれ、葬式をまねることから「葬式祭り」とも呼ばれている。

 ジャランポン祭りは諏訪神社の春の例大祭。地域住民が公会堂で会食した後、ほろ酔い気分になった午後5時半から祭りが始まった。今年の生き仏様役は福島康弘さん(40)。白装束に三角形の白い布を頭に付け、日本酒の一升瓶も持って、木製のひつぎの中に寝転んだ。

 自称インドやネパールで修行を積み、2年ぶりにお坊さん役となった大方丈の川島康助さん(67)がでたらめなお経を唱えると、会場は笑いに包まれた。読経中に何度もビールを飲んでいると、尿意をこらえきれず慌ててトイレに駆け込む場面も。

 喪主で福島さんの妻があいさつし、子どもたちも静かに手を合わせ、しっかりと笑いを誘った。

 葬儀が終わった後は葬列をつくり、「ナンマイダ、ナンマイダ」と唱えながら、あんどんで彩られた参道を通り、諏訪神社へ移動。神社では生き返った福島さんがひつぎの中から出てきて、大きな声で万歳三唱して締められた。

 大役を終えた福島さんは「1年前から指名され、嫌だなと思っていたけど、ひつぎに入ったらあっという間だった。ひつぎに入れてもらえることは光栄なこと」と笑顔。川島さんは「地方は人口減少が進んでいて、このお祭りも本当に小さな地区のお祭りだが、これからも続けていければ」と話していた。

ツイート シェア シェア