埼玉新聞

 

予期せぬ妊娠悩み…コロナ禍で相談増加 埼玉医大の医師も参加、ピル情報総合サイト開設 医療機関の紹介も

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 予期せぬ妊娠を防ぐ緊急避妊薬(アフターピル)を日曜・祝日にも処方できる医療機関などを紹介するピル情報総合サイト「ピルにゃん」が8月にオープンした。運営は株式会社アメニモ(東京都豊島区、白須真鶴枝代表)で、監修医として県内外の学校で性教育外部講師などの活動を行う埼玉医科大学の高橋幸子医師も参加。コロナ禍では若者の妊娠相談件数が増加しており、ピルにゃん編集長で所沢市出身の白須代表は「ピルへの正しい理解と活用を広めたい」と呼び掛けている。

 思いがけない妊娠に関する県の相談窓口「にんしんSOS埼玉」には3~7月で1302件の相談があった。県によると相談者は10、20代の若者が約8割。4月は前年同月比108件増、5月は同137件増で約2倍の件数に上り、コロナ禍の自粛期間などの影響で性や避妊の知識不足に悩む人が増えたとみられる。

 緊急避妊薬は医師の処方が必要で、さまざまな理由で避妊できなかった性行為から72時間以内の服用で妊娠を約80%防ぐことができる。性犯罪被害に遭った場合は無料、それ以外では数万円と高額になることがあり、ネット上で安価な海外製品が購入できるが偽物や副作用が強いものもある。

 世界保健機関(WHO)は「緊急避妊薬は女性の権利」としており、海外では薬局で買える国も多く、日本でも薬局販売を求めるオンライン署名運動が起きている。ピルにゃんでは、ベータ版として緊急避妊薬の入手方法や種類の違い、服用の際の注意事項などの情報を先行公開。今後は低用量ピルや生理に関する追加コンテンツの掲載を予定している。

 医療機関一覧では、厚生労働省が公表した緊急避妊に関する対面診療が可能な医療機関約3千件のうち、日曜・祝日も受診できる約300件を抜粋。通常診療を行う施設、時間外でも救急外来で対応する施設などに分類し、都道府県別に掲載した。

 24時間対応の医療機関では場合により時間外費用の加算があるため、施設への事前問い合わせを推奨。緊急避妊薬の処方後に低用量ピルに移行できるよう、可能な場合は産婦人科の通常診療を勧めている。

 高橋医師の監修医お薦めリストは、県産婦人科医会(平田善康会長)を通じた呼び掛けに応じた県内の産婦人科11件を含む、全国39件の医療機関を紹介。高橋医師は「医療者でも自ら学び心掛けていないと思いがけず患者を傷付けてしまうことがある。そういうことがないよう信頼できる施設を選んだ」と話している。

 白須代表は人材業界を経て医師紹介会社、医療ベンチャー、医療事務などで約6年間医療業界に携わった。「日本では男女問わずピルへの偏見が根強く、他者の選択に不寛容だと感じる。生理痛、避妊のどちらが服用目的でも、本人の権利を尊重する社会であってほしい」と指摘した上で、「生理や避妊など身近なことをきっかけに、正しい情報を得て自分の体のことを意思決定する経験を積んでほしい」と呼び掛けた。

 ピルにゃんのURLは(https://pillnyan.jp/)

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