埼玉新聞

 

埼玉で全国の“ブルドックソース”すべて生産も 支えた巨大な生産拠点“ブルドックソース鳩ケ谷工場”88年の歴史に幕 館林工場に移設統合、来年1月に本格稼働へ 鳩ケ谷が選ばれた理由、今後の跡地利用は

  • 9月に生産を終了し、今年末に移転統合されるブルドックソース鳩ケ谷工場(同社提供)

    9月に生産を終了し、今年末に移転統合されるブルドックソース鳩ケ谷工場(同社提供)

  • 鳩ケ谷工場で生産が始まったブルドックソースの旧ボトル。特徴的な四角いキャップ、ボトルは「ブルパック」と呼ばれた。現在は丸形ボトルに刷新されている(同社提供)

    鳩ケ谷工場で生産が始まったブルドックソースの旧ボトル。特徴的な四角いキャップ、ボトルは「ブルパック」と呼ばれた。現在は丸形ボトルに刷新されている(同社提供)

  • 開設間もない頃とされるブルドックソース鳩ケ谷工場。門柱には「ブルドック食品」「川口工場」の表札が掲げられている

    開設間もない頃とされるブルドックソース鳩ケ谷工場。門柱には「ブルドック食品」「川口工場」の表札が掲げられている

  • 9月に生産を終了し、今年末に移転統合されるブルドックソース鳩ケ谷工場(同社提供)
  • 鳩ケ谷工場で生産が始まったブルドックソースの旧ボトル。特徴的な四角いキャップ、ボトルは「ブルパック」と呼ばれた。現在は丸形ボトルに刷新されている(同社提供)
  • 開設間もない頃とされるブルドックソース鳩ケ谷工場。門柱には「ブルドック食品」「川口工場」の表札が掲げられている

 川口市の鳩ケ谷地区で88年にわたって食卓を彩るソースを作り続けた「ブルドックソース鳩ケ谷工場」が9月に生産を終え、今年末で群馬県館林市の館林工場に移設統合される。移設に際し、地元への感謝を込め市内80校全小中学校全児童生徒と全教職員へソースを2本ずつ、計約9万本が寄贈される。同社担当者は「90年近くこの地で操業させていただき本当にお世話になった。感謝の一言です」と長年の拠点であった川口市、鳩ケ谷地区への感謝を話している。

 ブルドックソース(東京都中央区)は食品卸商「三澤屋商店」として1902(明治35)年に開業し、05(同38)年にソースの販売を開始した。鳩ケ谷工場は35(昭和10)年6月に新設。鳩ケ谷が選ばれた理由としては、野菜の調達ができることや、良質な水があったことなどが挙げられるという。同工場には同社研究所、物流、原料調達、品質保証部門があり、98(平成10)年4月に館林工場が新設されるまで、ブルドックソースは全てここで生産され、全国へ出荷された。生産量は1・8リットル換算で年間約1千万本。同社の大規模な生産拠点だった。四角い白色キャップ、ボトルでおなじみだったソースも69(昭和44)年に初めて同工場で生産された。今年9月に同社は容器のリニューアルを発表しており、定番の「ウスター」「中濃」「とんかつ」ソースなどはより使いやすく、環境に配慮した丸いボトル容器となった。

 工場では2011(平成23)年から17(同29)年まで毎年、「ふれあい会」として工場開放日を設け、工場見学や料理教室、ソースを使った料理の試食などが行われてきた。また、鳩ケ谷のご当地グルメ「ソース焼うどん」は同工場と鳩ケ谷商工会とが共同開発。近隣小中学生の授業の一環として、地元の歴史を学ぶ際に工場を訪れる、あるいは社員が出向いて出張授業を行うなど、地域に開かれ、地元から愛された工場だった。

 かつては工場見学も行われていたが、近年では工場の老朽化などに伴い実施されていなかった。21(令和3)年7月、鳩ケ谷工場を移転し、国内3工場(鳩ケ谷工場、ブルドックソース館林工場、イカリソース西宮工場)体制を2工場体制へと再編する方針が発表されていた。

 11月27日はブルドックソースの浅倉貴執行役員らが川口市役所を訪問し、ウスターソース500ミリリットル、とんかつソース500ミリリットルそれぞれ1本ずつを市内全小中学校児童生徒教職員に寄贈することを奥ノ木信夫市長らに報告。浅倉さんは「この地で仕事をさせていただき、地域の皆さまには本当にお世話になった」と謝意を述べ「小さい頃に味わった味は大人になっても懐かしく思い出すもの。特に川口のお子さんには食べていただきたい」と話し、ブルドックソースの味が戦前からこれまで、川口から全国へと送り出されていたことを子どもたちに伝えてほしいとした。

 同社によると移設先の館林工場は来年1月から本格稼働し、鳩ケ谷工場の跡地利用計画については未定という。

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