埼玉新聞

 

SNSで人気爆発、完売続く桶川の男気トマト 有機栽培と低農薬で安全確保、甘いだけでない昔ながらの味

  • 「日本一おいしいトマトを作りたいという熱い思いを、相棒の『男気トマト』を通して伝えたい」と話す手島さん=桶川市川田谷の手島農園

 桶川市川田谷の手島農園は江戸時代から続く農家。18代目の手島孝明さん(45)は独自の無灌水(むかんすい)や有機、低農薬栽培で作り上げたブランドトマト「男気トマト」を生産、販売している。13年間の会社員生活で培った営業とマーケティングの経験、知識を生かし、新しい農業ビジネスに挑戦。今年になって会員制交流サイト(SNS)で人気が爆発した。手島さんを体現しているような「男気トマト」とは―。

■ブランディング重視

 手島さんは大学卒業後、食品会社に就職。2011年春に脱サラし、就農した。父の通男さん(75)が力を注いでいたのはキュウリだったが、自身はトマトを選んだ。

 「トマトの味は、半分は品種で決まる。でも残りの半分は作り手の栽培技術で差別化ができる。それにトマトは野菜の中で一番人気。どうせなら生産者が多いところで勝負したいと思った」。リサーチ力に裏付けされた強気は新しい栽培法を生み出す。

 トマト作りを手掛け、試行錯誤を繰り返していた時に、「水分ストレスで甘くなるのでは」と苗に水を一切与えなかったところ、乾燥に強く、トマト本来のうま味が引き出された、昔ながらの味わいのトマトが完成した。さらに化学肥料を使わず、魚粉や天然カキ殻を使う有機栽培と低農薬で安心、安全を確保した。

 しかし「どんなに良いものを作っても知ってもらわなければ価値にならない」。手島さんはトマトのブランディングに力を入れた。会社員時代の同僚が手島さんの人柄から名付けたネーミングが「男気トマト」。商標登録し、オリジナルのシールを作って袋詰めしたところ、スーパーなどで徐々に知られるようになった。

■甘いだけでない味

 「男気トマト」の特徴は甘酸のバランスの良さ。甘いだけでなく青臭さを残した昔ながらの味。「食べてもらえれば伝わる。でも、作るだけで自分からプロモーションしなかったら今までの農業と同じ」

 栽培の様子やトマトへのこだわり、農業への向き合い方などを日々の写真とともにSNSで発信することにした。ブログのコメントに丁寧に答えていると信頼関係が生まれてきた。そして「まるで昔の八百屋さんのように世間話の延長で売ったり買ったりできるようになった」と言う。

 今年に入って通販と直売を強化。SNSで知った人が遠方から自宅直売所に訪れることも。結果、どちらも完売で在庫のない日が続くようになった。「自分でも驚いた」と笑う。

■ライフスタイルモデル

 SNSで発信するもう一つの目的は「農業人口を増やす」こと。「農業をしていても時間の使い方次第で公私ともに充実できることを伝えたい。自分たちを見て、農業に興味を持ってもらえれば」と手島さん。ともに農園を支える母文子さん(73)は日本舞踊、妻尚子さん(44)は和太鼓、手島さん自身も陸上競技や音楽と多趣味な一家。築100年以上の母屋を二世帯住宅に改装し、2人の息子を含め6人家族で暮らす。「このライフスタイルをモデルケースにしてもらえればうれしい」

 将来の目標は「今ある形のビジネススタイルを変えず、規模を拡大する。機械化や人の雇用なども考えていきたい」としっかり見据えている。

 手島農園の「男気トマト」は大玉2・5キロ(1728円)から。現在予約できるのは来年4月以降の収穫分。問い合わせは、手島さん(電話090・4186・3720)へ。

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