埼玉新聞

 

<新型肺炎>埼玉の人工呼吸器、現状は エクモは埼玉74台…人材不足ですべて稼働できず

  • 人工心肺装置「ECMO(エクモ)」=7日午後、東京都文京区の泉工医科工業

 新型コロナウイルス感染が拡大する中、人工呼吸器や人工心肺装置「ECMO(エクモ)」の需要が高まっている。しかし、感染ピーク時の重症患者数に対して不足の懸念も出ており、各企業はオーバーシュートに備えて増産体制に入っている。

■部品調達

 日本集中治療医学会の2月の調査では、人工呼吸器は全国に2万2254台(回答した1558施設)。感染ピーク時には不足に陥る府県もある。埼玉県は1291台で、ほかの治療で使用中の台数を除くと724台が待機中。ピーク時の感染者は536人(厚生労働省調べ)で、不足には至らないものの、人工呼吸器の重症患者の割合は74%とひっ迫した状態に迫る。

 人工呼吸器を開発・製造するメトラン(川口市)では、成人用人工呼吸器として認可を受け現在、獣医医療用に転用されたモデルの仕様を部分的に変更して増産する。安定供給と管理のしやすさの観点から新型コロナウイルス治療用に有効と判断した。

 トラン・ゴック・フック会長(72)は「人間用も動物用も基本的に性能は同じ」とした上で、「海外では人工呼吸器が足りず、専門知識のない医療スタッフが扱っているのが現状。どの患者にも使用でき、医療従事者が管理しやすいシンプルかつ低コストの人工呼吸器が必要だ」と説く。

 人間用の認可取得の準備を進めるほか、従来の取引先だけでなく新規サプライチェーンから部品調達を行い、ベトナムの自社工場で月産30台から5千台へ生産強化を図る。

 医療機器メーカーの三幸製作所(さいたま市西区)は人間用と動物用の人工呼吸器を年間約55台生産するが、人間用を年間約30台から480台へ増産する予定だ。協力会社へ部品確保の要請をし、退職した従業員なども呼び戻して生産ラインを強化している。

 総合業務部営業企画の遠藤昭和さん(45)は「普段は麻酔用の人工呼吸器を製造しているが、パンデミック(緊急時)には生命維持に役立つ」とし、いつでも出荷できる体制作りを急いでいる。

■技士不足

 自力呼吸が可能な場合は肺の機能を人工呼吸器で補うが、重篤な患者に効果があるのがエクモだ。肺の機能を代替する体外の装置で、血液に酸素を供給し、肺を休ませている間に免疫力が回復するのを待つ。

 国内シェアの約4割を占める泉工医科工業(東京都文京区)は、春日部市の工場で増産を開始。通常年間約50~60台を生産するが、すでに170台分の部品を調達し、今年度中に出荷する予定だ。

 商品企画本部循環器部の立石誠司さん(52)は「医療機関からの引き合いがかなり来ている。開発部からも増員しフル稼働している」と安定供給の維持に懸命だ。

 エクモは全国に1412台。埼玉は74台で、62台が使用可能。しかし管理する臨床工学技士の不足で、保有分が稼働できない問題もある。国は製造メーカーへの補助金に加え、取り扱う技士や医療従事者の拡充を図る研修事業も始める方針。同社は「研修会へのエクモの提供なども行っていきたい」としている。

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