埼玉新聞

 

危険…道路に倒れ掛かる空き家 行政代執行で空き家解体、熊谷市が県内初 費用230万円、所有者に請求へ

  • 行政代執行により解体作業が始まった空き家。重機を使って庭木が除去された=25日午前10時半ごろ、熊谷市久下

 熊谷市は25日、同市久下に放置されている築88年の特定空き家について、倒壊などの危険性が高いとして行政代執行による解体作業を始めた。市によると、行政代執行で所有者が判明している空き家の全体を除去するのは県内で初めて。

 市によると、空き家は1931年に建築された木造2階建てと平屋の2棟。屋根や壁に穴が開き、内部は足の踏み場もない状態で、一部の柱は隣接する生活道路に倒れ掛かっている。

 市は2016年に地元自治会と協力して実施した実態調査で存在を把握。所有者は1992年に死亡しており、空家特措法に基づく特定空き家として相続人に指導を行ったが、期限の今年10月末までに改善されなかったという。

 空き家は市立久下小学校から約100メートルの距離にあり、子どもたちに危険が及ぶ可能性もある。台風19号の影響も加味し、行政代執行を決めた。約230万円の費用は所有者に請求する。

 富岡清市長は集まった近隣住民に向けて、「空き家の管理は所有者が行わなければならないが、保安上危険な状態を放置することは市民の生命、身体、財産を脅かす」とあいさつし、行政代執行を宣言。午前10時すぎから、重機を使って庭木の除去などを行った。

 本格的な作業に移るのは年明け以降で、来年1月末までに完了する予定。

 近隣住民によると、空き家は実質的には40年以上放置されていたという。作業を見守っていた男性(78)は「火災が起こらないか、子どもたちがけがをしないか、ずっと不安だったが、人の財産だから強く言えなかった。これで心配事が一つ減った」と胸をなで下ろした。

ツイート シェア シェア