埼玉新聞

 

埼玉のソウルフード・スタミナラーメンが看板メニュー、さいたまの「娘娘」 閉店するも「風雅食堂」で復活

  • ピリ辛の特製ラー油が効いたスタミナラーメン

  • 風雅食堂の厨房(ちゅうぼう)に立つマスターの平井さん(左)と直子さん=さいたま市桜区

 埼玉のソウルフードとも呼ばれるスタミナラーメン。豚のひき肉とニラのピリ辛あんかけが麺を隠すほどたっぷり掛かっている。さいたま市内を中心に上尾市などで「娘娘(にゃんにゃん)」や「漫々亭」という名のお店で提供されている看板メニュー。もともと約40年前、青森の同じ中学校出身者を中心にさいたま市内でやっていた店から独立した。味は各店ごとに違いがあり、それぞれの常連客らでにぎわっている。

 JR中浦和駅から徒歩8分、伝統の味を別の看板で提供している店がある。「風雅食堂(さかば)」だ。同所には昨年まで「娘娘」があった。浦和区で営業していた田中雅人さんが2004年ごろ、桜区の同所に移転。夫婦で切り盛りし、地域に愛され続けてきた。しかし、店主の雅人さんが17年2月、病で倒れてしまう。闘病中は病院から毎日のように外出許可をもらって店に通い、それまで麺をゆでたこともなかった妻の直子さんにレシピを教えた。

 「帰ってくる所を残したかった」という思いで直子さんは、伝統の味と店を守った。ところが、18年2月、惜しまれながら雅人さんは逝去。直子さんは娘娘の看板を下ろし、店を閉じた。

 当時、現在の風雅食堂のマスター平井則幸さんは、田中夫妻行きつけの居酒屋を経営。お互いがそれぞれの店の常連で、飲み友達でもあった。直子さんも平井さんも、娘娘の常連客に会うたびに「スタミナラーメンがまた食べたい」という声を聞いていた。

 「田中さん夫婦とお店の味を愛したお客さんの思いをつなげたかった」という平井さん。直子さんを説得し、「今も雅人さんの風が吹いている」という意味を込めた屋号に変えて18年5月、店を再びオープンさせた。

 夜も居酒屋として営業し、さまざまなメニューを提供するが常連でなくとも多くの客が注文するのは特製のラー油が効いたスタミナラーメン。直子さんは「この味が、主人が残してくれた唯一の財産。変わらない味だよと、お客さんが言ってくれるのがうれしい」とほほ笑んだ。

【メモ】さいたま市桜区西堀2の21の3。午前11時半~午後2時、午後6時~9時半。火曜日定休。主なメニューは、スタミナラーメン(税抜き550円)、スタカレー(同500円)。電話070・3962・4308

ツイート シェア シェア