蓮田市の公立保育園が休園へ─民間こども園の開園がきっかけ 揺れる保護者と問われる説明責任
蓮田市は8月、市立黒浜保育園(同市黒浜)を今年度いっぱいで休園する方針を明らかにした。施設の老朽化を踏まえ、近くに新設される民間の認定こども園や他の公立保育園へ児童の転園を促す。突然休園すると説明を受けた保護者や関係者に動揺が広がっている。
■2030年までは維持できるはずが…
子育て支援に力を入れる蓮田市。7つの公立保育園を維持してきた。黒浜保育園はその一つ。市の東部、黒浜沼など自然が豊かな地域にたたずむ。
蓮田市内の待機児童は2人だが、希望しても何らかの理由で入所できないいわゆる「保留児童」は55人(今年4月現在)。都市部に近い同市で、保育のニーズは低くない。
黒浜保育園は定員90人に対し、10月1日現在85人が利用する。1977(昭和52)年に完成し、築50年を迎える。鉄骨平屋建て、敷地面積2478平方メートル。延べ床面積460平方メートル。2013年に耐震工事を実施。市の公共施設の維持や将来的な統廃合などを定める個別施設計画で、同保育園は2030(令和12)年まで施設が維持できる計画になっている。
■突然休園の背景に「民間こども園」
これまで黒浜保育園に休園の計画はなかったが、この夏突如浮上した。市保育課によると、休園の主な理由は施設の「老朽化」だ。外壁や内壁に傷みがあり、給排水管にも腐食が見つかるなど、将来の安全性に課題があるという。
一方で緊急性を伴うわけではない。なぜ今年度なのか。同課は7月上旬、黒浜保育園から400メートルほどの場所に、民間認定こども園の建設が始まったことがきっかけと明かす。
「(新しいこども園が)建たないのに、先に休園を発表するわけにはいかない」と保育課の担当者は話す。建設着工を待ってから、こども園の開園に合わせ、休園を決めた経緯に含みを持たせた。休園の先に見通される「閉園」については「今後については決まっていない。次年度以降検討する」と答えた。
■転園費用を補助へ…議案可決
市は8月28日に議会で全員協議会を開いた。翌29日に保護者向け説明会を開き、それぞれ休園する方針を伝えた。保護者説明会では、転園した場合の費用負担について、意見が多く出たという。
世帯収入に応じ決まる保育料は変わらないものの、民間のこども園では別途負担が生じる。市は10月1日、定例議会で追加議案を提出。転園した場合に必要となる園児の制服やかばんなどを補助する費用(計約147万円)を予算に計上した。議会は賛成多数で可決した。
議案に賛成した議員の1人は全国的な傾向を背景に、市の政策に共感を示す。保育士の確保や施設の維持管理が市の負担になっていると加えた。議案に反対した議員は予算も休園も許さないとの立場だ。別の議員は議案には賛成したが、公立保育園の休園には反対する。「転園する園児の負担を市が補助するという議案には賛成せざるをえないが、保育園の休園は別問題」と述べた。
■「公立があっけなくなくなるのか」不安と切実な声
市の方針を受け、10月4日、市内で保育園の存続を求める住民や保護者、関係者が参加し、勉強会が開かれた。参加者からは「公立の保育園がこんなにあっけなくなくなるのか」、「あまりに唐突で計画性がない」、「市には子ども一人ひとりが見えていない」といった批判の声が相次いだ。
勉強会では、市側の説明を聞いた議員や保護者、関係団体担当者が、休園をめぐる問題点を報告。現状や課題について話し合った。
黒浜保育園は園長・副園長のほか、正規職員が8人、非正規職員10人の体制。新しくできる民間の認定こども園が公立保育園の質を維持できるか不安の声が上がった。
また当初市側は議員や関係団体に休園を説明する際、公立保育園を望む保護者が一定数いた場合は存続を検討すると回答していたことが分かった。しかし保護者説明会で存続の可能性については説明していなかった。
さらに療育を受ける保護者からは、切実な声も。新設するこども園からは療育は難しいと言われたという。子どもを抱きながら「子どももやっと慣れてきた。私も働き始めたのに、また辞めなくてはならない」と疲れ果てた表情を見せた。
■「市政の転換」問われる説明責任、署名活動も
公立保育園の休園は「切れ目のない子育て支援」を唱えてきた市政の転換にも受け止められる。地元自治会の男性は転入超過や保育ニーズの高まりに触れ「公立保育園の存廃は少子高齢化対策、人口戦略、公共施設再編の交点にある政策判断。市には説明責任がある」と強調した。
勉強会の参加者の中には、黒浜保育園の存続を求め署名活動に取り組んでいる人も。今後市や議会に要望するという。
市は今後10月23日までに保護者の希望を受け取り、来年1月に開かれる入園選考に向け準備を進める。市保育課は取材に対し「急な話に聞こえるかもしれないが、将来の子どもの安全を考えると、今行うことが最適な判断。保護者には理解して欲しい」と話している。
=埼玉新聞WEB版=










