【連載】埼玉発・企業トップが語る成長戦略 武蔵屋・小林総子社長〈前編〉 3つの「自社専用工場」が大手との差別化生む 小ロットの注文、要望にも迅速に対応
個人向けクリーニングをはじめ、法人向けのリネンサプライやユニフォームレンタルなどを広範に手がける武蔵屋(さいたま市見沼区東大宮)。地域社会からの厚い信頼と卓越した品質の高さを基盤に事業を拡大し、着実な成長を続けている。小林総子社長に、これまでの歩みと激変する市場環境を見据えた今後の事業戦略について聞いた。
―今年創業79年目です。改めて、御社の原点を教えてください。
「武蔵屋の始まりは、街の小さなクリーニング店です。まだ世の中にクリーニングというサービス自体が広く認知・定着していなかった時代、創業者の父が自転車の荷台に荷物を積み、一軒一軒の家庭を丁寧に回る『御用聞き』としてワイシャツなどを預かっていました。この地道にお客様一人ひとりと向き合い、対話を重ねてきた泥臭いスタイルこそが、時代が変わっても決して変わることのない私たちの原点です」
―早い段階から法人向け事業に参入されました。
「創業者が『これからは産業用、つまりBtoB(法人向け)の時代が必ずやってくる』と早くから見据え、大胆に舵を切りました。その中で大きな転機となったのが昭和30年代のことです。旧国鉄から新幹線の座席背もたれカバーのクリーニングを一手に受注することができました。このJR東日本グループさまとの信頼関係と取引は、実は現在も途切れることなく続いています。創業者は生前、いつも『時代の先を読み、一歩先を行くことが何よりも大切だ』とその重要性を説いていましたが、まさにその先見の明が、現在の法人向けを主軸とする強固な事業基盤を作りました」
―原点である個人向けクリーニング事業はどのように展開していますか。
「個人向けも大切に守り、進化させています。直近では、新たに川口市のクリーニング店をM&A(合併・買収)によって取得し、その既存店舗網をそのまま引き継ぐ形で地域展開を進めています。地域住民の皆さまに根差した店舗網の価値を大切にしながら、ネットワークを維持・拡大していく方針です」
―現在の法人向けと個人向けの売上比率はどのようになっていますか。
「現在は法人が9割、個人が1割という構成になっています。数字が示す通り、法人向けのクリーニングやリネンサプライが完全に経営の主軸となっています。お取引先は、温浴施設やホテル、外食産業、各種工場など多岐にわたっており、景気変動の波に左右されにくいよう、幅広い業界の多様なニーズにきめ細かく対応できる体制を整えています」
―競合他社と比較した際、御社の最大の強みはどこにありますか。
「最大の強みは、上尾市と群馬県藤岡市に、ユニフォーム工場とリネン工場を合わせて計3つの自社専用工場を保有・稼働させている点にあります。この自社インフラがあるからこそ、徹底した衛生管理やスピードが求められる多様な業界のご要望にも、高いクオリティで確実にお応えできます。また、大手の競合他社が対応しにくいような『小ロット』の注文や細かなご要望に対しても、柔軟に寄り添い、カスタマイズしたサービスを提供できる体制が、お客様からの厚い信頼につながっています」
【企業概要】株式会社武蔵屋…本社・さいたま市見沼区東大宮4-29-1。1950年12月に設立。資本金は5,000万円、従業員数は418人(2026年7月末現在)。法人向けリネンサプライ、業務用ユニフォームレンタル&クリーニング、個人向けホームドライクリーニング、業務用各種商材の販売・卸売を扱う。主要拠点は上尾市に上尾工場、群馬県藤岡市に藤岡ユニフォーム工場・藤岡リネン工場。
【埼玉県の経済をけん引する企業トップに焦点を当てた、新インタビュー連載「埼玉発・企業トップが語る成長戦略」がスタート。毎週火曜日と金曜日の週2回、電子版で配信する。激変する経営環境のなかで、いかにして次の成長カーブを描いているのか。最前線で舵を取る経営者の戦略に迫る】
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