楽屋通して描いた人間の愚かさ 短編映画「挨拶」で初監督の古舘寛治
俳優の古舘寛治が、舞台上演後の楽屋を舞台にした短編映画「挨拶」を初監督した。9月25日、27日に東京のテアトル新宿で上映される。関係者から早くも「和製クリント・イーストウッド」との声が上がる遅咲きのホープは、社交の場の「何とも気持ち悪い空気」を描きたかったと語る。
「挨拶」は、出演予定作の演出家の舞台を見た崖っぷちの俳優(金子岳憲)が、ひどい出来だと思いながら、マネジャーから命じられ演出家のいる楽屋を訪れるコメディー。感想を伝えないまま去ろうとするも失敗し、思いもよらず窮地に立たされる姿は、滑稽ながら悲哀がにじむ。
「生きていると人間って変だなとか、面白いなとか、愚かだなと考えることがある」という古舘。今回、舞台の後は必ずと言っていいほどあるというあいさつの機会に焦点を合わせた。「多くの人が(肝心の)作品についてはあまり語らない。人間の愚かさという意味で、作品化する価値があると思いました」
「結局、なんで監督をやりたいのかというと、俳優を面白く(演出)したいから」。目指すのは、その人物が本当にいるような、演技を感じさせない演技。その場の空気を感じて俳優同士が反応するようになることが必要だと考え、3日間の撮影のために同じ日数のリハーサルを行った。
「最初は僕の意図しているものが言葉でなかなか通じなくて、『これは撮影の時に大丈夫かな』って不安だったけど、いざ撮影初日になったらちゃんと考えてきていて、俳優って変わるんだなって感動しました」
演劇的とも言える引きの映像が、それぞれの反応を可視化し、その場の空気感を伝える。「僕が面白いと思う演技に最終的にたどり着いた。とても満足しています」
米国で演技を学び29歳で帰国後、演劇の世界に入った古舘。役者として食べられるようになる前、友人から頼まれた演出が楽しかった記憶が残っており、映像の世界でも監督したいという思いが膨らんでいった。
「このままではやらずに終わってしまう」。そんな思いから旧知の劇作家やプロデューサーに声をかけチームを作り、映像クリエーター支援プロジェクト「講談社シネマクリエイターズラボ」に応募。1013本の企画の中から優秀賞に選ばれ、映画製作費1000万円を獲得した。
ロケハンや出演者集めのほか、チーム内でぶつかることもあり、「大変なことはいっぱいあった」という。それでも「クリエーティブなところで言うと、監督は最高」と話す。「監督が求める世界を具現化するのが俳優だが、監督は自分が面白いと思う世界を作れる」
好きな俳優業を引退するつもりはないが、これからも監督を続けていきたいと語る。「もうね、長編しか撮りたくないですね」と笑った。











