埼玉新聞

 

『まどか☆マギカ』脚本の虚淵玄「セカイ系は時代遅れ」実感 10年前始動の新作「いつもの癖」は控えめに

  •  『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project

     『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project

  •  『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』より(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project

     『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』より(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project

  •  『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』より(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project

     『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』より(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project

  •  『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』より(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project

     『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』より(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project

  •  『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』より(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project

     『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』より(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project

  •  『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project
  •  『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』より(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project
  •  『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』より(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project
  •  『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』より(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project
  •  『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』より(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project

 2011年にテレビアニメが放送されて以来ファンが増え続け、いまだ高い人気を誇る『魔法少女まどか☆マギカ』。2013年の「[新編]叛逆の物語」の正当な続編となる『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』が8月28日に公開された。脚本を担当した虚淵玄は、新作が10年以上前から動き始めていたと明かす。「セカイ系の物語は時代遅れになった」と語りつつ、新しい時代のエンタメ作品の出現に期待した。(取材・文 共同通信=高坂真喜子)

(1)材料は9割方そろっていた

▼記者 新作を作ると決まった時、どのように感じましたか。

●虚淵 10年以上前の話になります。僕の方ではアイデアがなくて、しばらくアニメを離れて、特撮の仕事をするなどしていました。劇団イヌカレー(泥犬)さんがアイデアを用意してくれて、分厚く、情報量もすごかったので、これを整理すれば物語として成立すると感じました。これがあれば脚本として再構成することができますねと、お引き受けしました。僕としては、続きが作れるとは夢にも思っていませんでしたが、食材をいただけたので料理ができたという感じです。

▼記者 10年以上前ということは、前作「叛逆の物語」が終わった頃から話自体は動き始めていたということですか。

●虚淵 「仮面ライダー鎧武/ガイム」(2013~14年放送)を担当した後にお話をいただいたんですよね。その1年の間に劇団イヌカレーさんに書きためてもらったアイデアノートがすごい量になっていて、これなら行けますねとなりました。

▼記者 アイデアノートには、どんな内容が書かれていたのでしょうか。

●虚淵 この映画の材料が9割方そろっていました。「名塚底根(なづかそこつね)」や、「ワルプルギスの夜」の造形とか、そういった材料はほぼ出そろってまして、ラストを僕の方でちょっと考えさせてもらいました。「ワルプルギスの夜」の正体に関わる部分を僕が足したような作りです。

▼記者 脚本を書く難しさはありましたか。

●虚淵 初稿までは割とすんなりいきました。いったん脱稿して、別の作品を担当していました。その後で「やっぱり結末を変えたい」という新房昭之総監督の希望があって、自由にいじってもらって構いませんという形にしたのですが、そこからが難儀したようです。他の方に一から書き直してもらうみたいな話も何度かあったとか。それで紆余曲折あって、元の僕の書いた本にいったん戻すと報告を受けたのが、4、5年ぐらい前ですかね。元々の方針に戻して仕切り直すけど、それでもやっぱりラストを変えるということで、その辺はお任せしました。

▼記者 結末には、虚淵さんの案がどのくらい採用された形なのでしょうか。

●虚淵 ラストの部分の見え方がちょっと変わったぐらいです。途中までの流れはほぼほぼ一緒で、救いがあるように調整し直してもらっている感じを受けましたね。

▼記者 救いのある感じとは。

●虚淵 僕のいつもの癖は、キャラクターを死なせて退場させちゃう。今回は見ていてギョッとするようなショッキングさがなくなって、それはむしろ良かった。無残さを控えてもらえて、むしろ見やすくなったのではないかと思います。

(2)ほむらが背負った管理職の苦難

▼記者 実際ご覧になっていかがですか。

●虚淵 素晴らしかったです。本当にきれいにまとめてもらえて、なるほどこういうのを求めていたんだと、出来上がった映像で納得できました。僕の評価は120点どころか、僕が考えたものよりも良いものにしてもらえたという手応えがあります。

▼記者 キャラクターそれぞれに見せ場がありますね。

●虚淵 アイデアノートから物語にする時、キャラクターたちがそれぞれどう動くかを考えるのが、脚本を書く助けになりました。むしろ、既に作っていたキャラクターの描写を逐一追っていたら、自然と物語になってくれました。新しく出てきたキャラクターと関わる形で、以前のキャラクターも活躍してもらえて、杏子やさやかのキャラがよりきちんと立ってくれたので、むしろうまくまとまりましたね。

▼記者 ほむらについてはどう思いますか。

●虚淵 あの子は、管理職や会社経営者はああいう苦労をしているのではという、そんな苦難を背負っているキャラクターです。中学生の女の子っぽくはないかもしれませんが、物事を左右できるからこそ、背負い込む羽目になる。それがほむらをドラマチックにしている要素ですね。

▼記者 今回登場した新キャラについて、こだわったところはありますか。

●虚淵 初期メンバーの魔法少女の5人に被らないような、別の個性を持たせるように気をつかいました。「普通の人ならこう思う」というキャラ付けを、これまでの作品でやったので、キャラクターのカウンターになるような価値観を持ったキャラにしないと、印象として負けちゃうんじゃないかと考えました。それによって、セルマは結構“ピーキー”なキャラクターになりました。

(3)現代の青春は開けっ広げ

▼記者 10年以上前に書いたということですが、ご自分も変わったことはありそうですね。

●虚淵 僕もいろいろ芸風が変わっちゃって、中学生の女の子は、この先書けないな、みたいな。そういう変化が生じる前に書くことができて良かったなとは思います。今だからこそ言えますけど、てっきりお蔵入りかと思って諦めていたので、何はともあれ実現に至ったというのは、本当にうれしい限りですよね。

▼記者 女子中学生を書くのが難しいとは。

●虚淵 この10年間、僕は脚本の仕事で男性のチャンバラばかりを突き詰めていました。気がつくと、自分が年齢を重ねたというのもありますが、若い子たちの気持ちやはやりというか、今の時代の中で、彼や彼女が何を思って青春を過ごしているのかが見当もつかないという場所に来た。今から青春について書くと、昔話になる気がします。

▼記者 もし青春ものの依頼があるとしたら、書きづらいですか。

●虚淵 僕としては、きちんと自分も成長できたんだな、という前向きな気持ちではあります。この年になってまで、心が中学生のまま、生きているのはしんどかろうと思います。これからの時代の青春物語というのは、それを知っている若手に書いていってもらえばいい。昔話をしていけばいいじゃないか、という思いはありますね。

▼記者 年齢以外にも作風の変化に影響したものはありますか。

●虚淵 世界の流れが速いですよね。こんな勢いで世の中が変わっていくのって、昔と比べてなかなかなかったのではないかと思います。今の世界は、3、4年前に想像もつかなかった。コロナ禍で学校に行けなかった人の青春も、語り聞く範囲でしか分からないし、そこから出てきた物語なんていうものもいろいろあって、自分が共感できた青春の物語が既に古いと、常々感じますね。

 例え話ですが、昔「セカイ系」という閉じた空気の中で、ヒロインと疑似恋愛して、みたいな文化がありました。あれはおそらくもう完全に時代遅れですね。僕なりに実感したのが、昨今の推し文化、若い子たちは、男の子も女の子も、ときめきの相手を他の人たちと共有することに何の抵抗もない。あの開けっ広げな祝祭感は、僕らが覚えているすごく閉塞的な青春の景色からは想像もつかなかったものですね。「おまえ、ウジウジしてないで、YouTuberの配信とか見てみなよ」みたいに思っているのかも。コメントを拾ってもらえたら、何か悩みが晴れるかも、とか、そんな青春。なるほど、これはちょっともう、僕が何か新しく語れる余地っていうのは、どんどんなくなっていくだろうなっていう感触はありますね。

▼記者 このような時代に、この作品はどう受け止められると思いますか。

●虚淵 正直不安です。もうちょっとお客さんが参加するというか、お祭りのようなものが喜ぶんじゃないのかな、という気持ちはちょっとあります。この作品は、セリフの密度が多すぎて、こんな勢いでキャラがしゃべっていると、同時視聴とかしんどくないかと感じます。これが今どきの若い人に喜んでもらえるのかどうかは、ライターとしては不安はありますが、それはそれとしてとても刺激的な映像なので、そこで評価はしてもらえるだろうなと、安心感はありますね。

▼記者 これからどんなものに虚淵さんは携わっていきそうでしょうか?

●虚淵 物を作るやり方やジャンルそのものが変わっていくという予感もあります。だから、むしろ今ないジャンルが出てきた時に、ぜひ参加したい。やりたかった事は、自分なりに一通りできた後なので、焦りはないですが、これから見たことも想像もしたこともないような物の作り方やエンタメの形が出てきてくれるんじゃないかな。そんな期待感で次を待ち構えているところですね。

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