50年超の歴史に幕じた「沼プー」、ドキュメンタリー映画に…最後の49日間に密着 太田信吾監督「これほど愛されたプールはない」「記録として心の中に残り続ける」全国公開へ
都市開発によって50年以上の歴史に幕を閉じた、埼玉県さいたま市南区の沼影市民プール。突然の閉鎖や存続を願う地域住民らの思いに迫ったドキュメンタリー映画「沼影市民プール」が5日に全国公開され、太田信吾監督(40)らが公開記念舞台あいさつで登壇した。「これほど愛されたプールはない」「記録として心の中に残り続ける」―。映画出演者らは作品に込めた万感の思いを語った。
同プールは1971年に「海なき市にプールを」という市民の願いに応えて開業した。「沼プー」の愛称で多くの人に愛されてきたが、さいたま市の義務教育学校の建設計画に伴い、閉鎖が決定。屋外、屋内プールともに取り壊された。
映画は屋外プール最後の営業となった23年夏の49日間に密着。プールの取り壊しを知った地域住民らの葛藤や思いを描写し、都市開発の裏で置き去りにされる地域住民の心のケアを浮き彫りにした。市が開催した住民説明会や解体工事の様子も撮影し完成させた。ニュージーランドや韓国・釜山をはじめ、多数の海外映画祭にも出品されている。
同市北区のイオンシネマ大宮では上映後、太田監督や映画の出演者らが舞台あいさつに登壇した。
太田監督は同市出身。変わりゆく地元の街並みを見る中で、取り壊されていく場所との別れを惜しむ時間がないことに疑問を感じ、「映画製作が(地域住民の)ケアのプロセスに役立つのではないか」との思いで企画を始めたという。
25年間働いた同プールを「人生の一部だった」と例える元所長の会田孝志さん(49)は、「記憶はだんだん薄れていくが、映画を見た瞬間、(プールの)現場に戻れた気がした」と万感の思いを込めた。「スライダー兄さん」として知られる大沢正俊さん(48)も「これほど愛されているプールはないと感じた。記録として皆さんの心の中に残っていくと思う」と述べた。
映画はイオンシネマ大宮やユナイテッド・シネマ浦和(同市浦和区)、シアター・イメージフォーラム(東京都渋谷区)を皮切りに、全国で順次公開される。
公開前には、地元住民や元利用者ら約50人がボランティアスタッフとして駅前などでチラシを配布した。太田監督は「みんなの思いが実り、感無量。都市開発の在り方や(プール閉鎖までの)段階の踏み方を振り返る時間になれば」と語った。










