〈連載〉どうする中高生のスマホ依存・前編 スマホ依存に至る要因、その背景には別の問題も 「睡眠と心のクリニック」合田廷大院長インタビュー
近年、問題になっている子どもたちの間で広まっている「スマホ依存」。こども家庭庁が今年2月に公表した「2025年度青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、スマートフォンやタブレット端末などの専用機器で1日に5時間以上インターネットを使用する中学生は48・0%、高校生は63・3%とおよそ半数にも及ぶ。夏休みも終盤を迎え、子どもたちがスマホに触れる時間が増える中、保護者は依存傾向にある子どもたちとどのように向き合うべきなのか。「睡眠と心のクリニック」(埼玉県さいたま市中央区下落合)で院長を務める、心療内科医・合田廷大氏(35)にインタビューを行った。
―中高生がスマホ依存に陥る要因や背景は。
まず、誤解されやすいこととして、子どものスマホ依存は単に「意思が弱い」「我慢ができない」という問題ではありません。スマホを長時間使用する背景には、学校でのストレス、友人関係の悩み、孤独感、自信の低下、不安、抑うつ、発達特性などが隠れていることがあります。
スマートフォンには、動画、ゲーム、交流サイト(SNS)、メッセージなど、短時間で強い刺激や安心感を得られる機能が集まっています。自分をコントロールする力が発達途中にある中高生にとっては、使用を自分だけで切り上げることが難しいものです。ストレスを解放する手段が限定されている現代で、子どもがスマホに頼るケースも少なくありません。スマホ依存を考える際には、使用時間だけでなく、「なぜその子がスマホから離れられないのか」を理解することが大切です。
なお、「スマホ依存」という言葉は広く使われていますが、使用時間が長いだけで病気と判断するものではありません。使い方をコントロールできず、睡眠、学業、家族関係、健康に支障が生じているかどうかが重要です。・
―スマホ依存による二次的な問題は。
スマホの過剰使用によって最も起こりやすい問題の一つが、睡眠の乱れです。聞き慣れているラジオや音楽を聴く分にはいいのですが、スマホは基本的にスマホ自体を使わせようとする仕組みがたくさんあります。夜遅くまで動画やSNSを見ていると、就寝時刻が遅くなるだけでなく、次々と情報が入ってくることで脳の興奮が続き、布団に入っても眠れなくなります。通知やメッセージが気になり、夜中に何度もスマホを確認してしまう子どももいます。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、良い睡眠のためにはスマートフォンやタブレットを寝室に持ち込まないことが勧められています。
睡眠不足が続くと、朝に起きられず、遅刻や欠席が増える、授業中に眠くなる、集中できないといった問題が生じます。さらに、イライラしやすくなる、気分が落ち込む、不安が強くなる、衝動を抑えにくくなるなど、心の状態にも影響します。その結果、ストレスのはけ口としてスマホにより依存してしまう悪循環に陥ることがあります。
一方で、スマホの使用が心の不安の「原因」とは限らず、もともとの心の不調があるためにスマホ使用が増えていることもあります。原因と結果を一方向に決めつけず、背景にある発達特性、強迫症状、家庭や学校の環境まで丁寧に確認する必要があります。
―スマホ依存と親子関係の変化に関係は。
スマホの使用をめぐる親子関係の悪化も、非常に大きな問題です。保護者は、子どもの睡眠不足や成績低下、遅刻や欠席を心配し、スマホの使用時間を注意したり、取り上げようとしたりします。一方で、子どもにとってスマホが友人とのつながりや不安を紛らわせるための大切な手段になっている場合、制限されることを「自分の気持ちを理解してもらえない」「大切な居場所を奪われる」と感じることがあります。
親子関係が悪化して家庭内で安心できなくなると、子どもはさらにスマホの中に居場所や安心を求めるようになります。つまり、親子関係の不和はスマホ依存の結果であるだけでなく、スマホへの依存をさらに強める要因にもなります。
子どものスマホ使用が問題になっているとき、表面上は「使用時間」や「約束を守れないこと」に目が向きがちです。しかし、その奥には、不安、孤独、学校でのつらさ、自己肯定感の低下、そして家族に気持ちを伝えられない苦しさが隠れていることがあります。
―後編では、合田院長の治療方針、悩む親子の向き合い方などについて伺う。
【睡眠と心のクリニック】埼玉県さいたま市中央区下落合1027「TAIRAYA与野店」の4F。JR京浜東北線の与野駅西口より徒歩3分。診療科目は、心療内科、精神科、内科。休診日は水、日曜日と祝日。診療時間は午前10時~午後1時、午後2時半~午後7時まで(土曜日は午前の診療のみ)。
=埼玉新聞WEB版=











