【Tokyo とことこ散歩】「討論」生んだ重文の建築 港区三田、慶応大周辺
江戸時代、武家屋敷が立ち並んでいた東京都港区三田で、島原藩中屋敷の跡地にあるのが慶応大三田キャンパスだ。JR田町駅から歩くと、カレッジソングの一つ「丘の上」の歌詞のように、高台に大学があった。
4学部6研究科の学生約1万2千人が学ぶキャンパスで、八角塔が目を引く図書館旧館を訪れた。1912年完成で、重要文化財に指定されている赤レンガ造りの建物は壮麗なたたずまいだ。
八角塔の別名「月波楼」は、かつて藩邸の一角にあった3階建ての同名の楼閣に由来する。品川の波に揺れる月光をめでた名所で図書館としても使われた。旧館は楼閣とは別の位置に立つが、風流な名前が歴史を伝える。
慶応義塾の創立者、福沢諭吉の思想を今に伝え、重文に指定されたのが「三田演説館」だ。1875年に完成した和洋折衷様式の建築。口頭で意見を言う習慣がなかった時代に、演説や討論を実演して広め、自由民権運動につながったという。
慶応大正門を出て、老舗和菓子店「大坂家」へ。元禄年間創業とされ、1927年から三田に店舗を構える。若女将の倉本朋実さんは三田で生まれ育った。再開発の影響で個人商店が減ってしまったが「神社の例大祭での盛り上がりに下町かたぎを感じますね」。
大坂家から徒歩5分の「聖坂」に足を運ぶ。途中、女性2人が特徴あるビルを見上げていた。視線の先は「蟻鱒鳶ル」。
建築家岡啓輔さんが施主で設計も施工も手がけたセルフビルドだ。鉄筋コンクリート造りで、2005年から計100人以上が携わりほぼ完成した。水分が少なく超高強度のコンクリートを使用、専門家は「200年もつ」と評した。
岡さんは通りすがりの人が見てくれるのはうれしいといい、「好き嫌いを含め、この建築について議論が生じること自体を大事にしたい」と話す。
【ちなミニ】慶応大の公式グッズを販売する三田インフォメーションプラザの人気商品は学生食堂の名前が付いた「山食カレー」。
















