まさか…イラン情勢、こんなに長引くとは 原油価格の高止まり…赤字続くガソリンスタンド、営業を終了 政府の補助金、個人商店に恩恵なく 過去の石油危機を経験…正常化には相当な時間「立て直しは不可能」
イラン情勢の悪化でホルムズ海峡が事実上封鎖され、原油価格は高止まりの状態が続いている。多方面に影響が出ている中、苦境に立たされているのが公的支援の網から漏れた個人商店だ。幸手市上高野でガソリンスタンドを運営する「手島石油」は赤字が続き、5月末で店舗の営業を終了して他社に貸し出す決断をした。半世紀にわたり看板を守ってきた会長の手島幸成さん(76)は「このままだと従業員の給料を下げざるを得ず、大勢に迷惑をかける。正しい判断だったと思う」と複雑な胸中を明かす。
手島石油は1973年4月、手島さんが創業した。オープンから間もなく第1次オイルショックが発生。客から「なんでガソリンを売らないんだ」とクレームを受け、「惨めな思いをした」。2011年の東日本大震災では現金仕入れでガソリンを確保し、道路に給油待ちの車列が延々と続いたのを鮮明に覚えている。
近隣にガソリンスタンドが増えると、競争が激化した。客自身が給油するセルフ式スタンドが流行する中、従業員の接客から車検予約や中古車販売につなげる「フルサービス」のスタンドとして生き残る道を選択。経営は軌道に乗り、安定した利益が生み出せるようになっていた。
まちの小さなガソリンスタンドの運命を変えたのは2月28日、イランへの攻撃開始だった。「10日間くらいで落ち着き、元に戻るだろうと踏んでいた。まさかこんなに長引くとは」。戦争の影響でガソリンの仕入れ値は高騰し、1リットル当たり140円前後だった販売価格は一時、182円台まで跳ね上がった。
政府はガソリンの元売り各社に補助金を支給して価格の抑制を図った。しかし、元売り会社から直接仕入れる「特約店」ではない手島石油に恩恵はなく、他店との比較で値上げもできない。軽油や灯油も仕入れ値とほぼ同額で販売し、「売れば売るほどマイナス」の状態に陥り、3月は約600万円、4月も約400万円の赤字を見込む。過去の石油危機を経験している手島さんは正常化には相当な時間を要すると予想し、立て直しは不可能だと考えた。
憂慮したのが、社員6人、アルバイト30人の生活だった。慢性的な人手不足に悩まされる業界で、手島石油は「仕事は大変だけど、喜びも感じてほしい」と福利厚生を重視。規程の年間労働時間に達したアルバイトを対象に約10年間、費用の大半を会社が負担してハワイ旅行に招待していたこともある。
幸いにも特約店を持つ取引先が6月以降、店舗の運営を引き継ぎ、ガソリンスタンドとして存続できるめどが立った。手島さんは「この1カ月、従業員の雇用を守ることだけを考えてきた。やっと安心できる」と胸をなで下ろすが、半世紀掲げてきた看板を失う寂しさは消えない。
「原油価格が高騰すれば、自然と消費を抑えようという動きが広がる。それでも、油を使わざるを得ない人たちは一定数いる。本当に困っている人々を救うのが、支援ではないか」









