中東情勢悪化で原油高騰、埼玉の企業活動に影響広がる 医療用品や工業製品の原料不足・価格上昇が深刻化「大打撃」の声も 企業96%がマイナス影響と回答、生活不安も拡大
米国とイランの対立を巡る中東情勢の悪化で、県内でも製造現場などを中心に経済活動に影響が出始めている。石油由来の原材料の不足や供給不安、価格高騰などの影響が長期化すれば企業経営や消費者の生活への危機も生じる恐れがあり、「大打撃」「先の状況が読めない」などの声も上がっている。
「製品だけではなく作業で使用する物も石油由来。業務全般に影響がある」。注射筒などの医療製品を製造する協和精工(さいたま市岩槻区)の谷口広専務(75)は苦しい顔で話す。同社では50種類以上の製品製造や梱包(こんぽう)などを委託で請け負っており、約9割が石油由来製品だという。医療用品全般に使用されるポリプロピレンなどの原料となるナフサ関連の素材は仕入れ値が40%の値上がりを余儀なくされた。「待っている顧客のためにも製造は止められず、受け入れるしかない」
製品の梱包に使用する樹脂材料や、製造の過程で作業員が着用している合成ゴムの手袋も納期が不透明になった。加えて、取引先は供給不足の懸念から余分に製品を仕入れようと、普段より注文が殺到しており、納期の不安感は拭えない。谷口専務は2~3カ月は業務に支障ないというが、医療製品は供給が途絶えると人命に関わると懸念し、「先の状況が全く読めない」と不安を漏らす。「ホルムズ海峡が通行できるようになったとしても、改善の動きが全体に広がるまで時間がかかる。どちらにしても、今年中は影響が残ると思う」と語った。
消費者にも不安感は広がっている。自身も1型糖尿病を患っており、「1型糖尿病&インスリンフレンズの会」代表の吉田恵さん(39)=川越市。吉田さんは、血糖を抑えるために種類の違うインスリン注射を3本常備し、1日7回の注射が欠かせない。注射の本体や針、さらに血糖値を測定する機器など石油原料のプラスチック素材で作られている。吉田さんは「インスリン注射は命をつなぐため、生活になくてはならないもの。供給が止まると生きていけない」と訴えた。
毎月の検診でかかる費用は処方される注射代も含めて、約1万5千円に上るという。「注射の価格が上がってしまうと、今後の生活がとても厳しい」とし、「供給や値段の安定のためにも、戦争が早く終わってほしい」と語った。
影響は伝統産業にも見られる。砂で作った型に溶かした金属を流してロボット部品などの鋳物の製造を行う「小泉アルミ」(川口市上青木)では、原材料のアルミニウムの仕入れ値が4月から1キロ当たり10~20円値上がりした。仕入れ元でアルミニウムを溶かすのに使う原油の価格高騰を受けたもので、1カ月当たり12~13トンのアルミニウムを使うため4月の支出は例年より130万円ほど増えた。内田英嗣社長(56)は、「来月にはさらに30円ほど値上がるとの通知が出ていて大打撃。周りの町工場はどこも同じく苦しい状況で、伝統産業がなくなってしまうのではないかという危機感がある」と胸中を明かした。
■企業の96%「マイナス」 帝国データバンク調査
帝国データバンクが4月に行った企業への「中東情勢による原油価格高騰・供給不安の影響アンケート調査」では、回答した1686社のうち96・6%の企業が「マイナス影響がある」と回答した。
同社大宮支店の担当者によると、県内でも燃料を多く消費する運送会社や建設業者が使用する塗料など、広範囲に影響があり、「時間が経過すればするほど個人消費にも影響が出てくる恐れがある」とした。
現時点で関連した企業倒産はないとしつつ、「半年ほど先には経営に影響が出てくる企業が出てきてもおかしくない。国や金融機関の支援策が求められることになるのではないか」と分析した。









