“幸せの一滴をみんなの手で” 埼玉東部初のワイナリー目指し幸手でワイン用ブドウの栽培がスタート 不動産会社が遊休農地を借り受けて畑を整備
幸せの一滴をみんなの手で―。幸手市外国府間でワイン用ブドウの栽培がスタートした。市内にワイナリーの開業を計画する地元の不動産会社「オフィス中井」が遊休農地を借り受けて畑を整備。7日に市民約100人が苗木を植え、新たな特産品の開発に向けた一歩を踏み出した。県東部では初めての試みで、10年後をめどに地域の魅力が凝縮された「幸手産ワイン」の完成を目指す。
■古里に恩返し
発起人は「オフィス中井」専務の中井亮仁さん(32)。もともと農業に興味があり、大学卒業後に自社農園のブドウを使って国産ワインを製造している山梨県笛吹市の「スズラン酒造工業」に就職した。6年間勤務し、「古里に県東部初のワイナリーをつくって恩返しをしたい」と思い立ち、父親が経営するオフィス中井へ。昨年1月、社内にワインセクションを立ち上げた。
市北部に広がる約4ヘクタールで栽培するのは白ブドウのシャルドネ、シェンブルガーと、赤ブドウのピノ・ノワール、メルロー、マルスランの5品種。今回は0・25ヘクタールにシャルドネの苗木を500本植えた。他品種については今後、畑を拡大しながら作付けしていく。
「住んでいるまちで、どんなワインができるのか気になる。飲みやすいワインだとうれしい」。夫と子ども2人の家族4人で植樹に参加した市内のパート石橋麗さん(33)は声を弾ませる。中井さんから相談を受け、条件に見合う土地を紹介した市も「幸手の新たな特産品として、ふるさと納税の返礼品などに活用できれば。今後も継続的に支援していきたい」と期待を寄せる。
■平地でも証明
栽培するワイン用ブドウは安定した品質と収量を確保できるまで、PRと事業資金に充てるためジュースの原料に使う。準備が整い次第、よそのワイナリーにワインの醸造を委託。醸造所の建設後、酒造免許を取得して本格的な生産に乗り出す見通し。中井さんは「例えば、桜をイメージしたピンク色のワインなど、幸手の特色を生かしたワインを造りたい」と構想を練る。
ワイン用ブドウは食用ブドウに比べて小粒で、甘味と酸味が凝縮されている。栽培は水はけがよく、昼夜の寒暖差が大きい土地が適しており、山梨県や北海道、長野県が主要産地として有名。県内では山間部の秩父市や小川町で栽培されているが、関東平野のほぼ中央に位置する幸手市では例がない。大規模なブドウ農園自体が初めてという。
中井さんは気候風土が似ている加須市にある親戚の畑でワイン用ブドウの栽培実験に成功しているが、「幸手でもうまくいくかは正直、やってみないと分からない」。手探りの中、頼りにしているのがスズラン酒造工業時代の上司で、要請に応じてオフィス中井に入った醸造家の福嶋正人さん(49)だ。山梨大学が認定する「ワイン科学士」の称号を持ち、「やるからには良いワインを造って地域に貢献したい」と心強い。
今回植えた30センチのほどの苗木は順調に育てば、今年8月に収穫を迎える見込み。中井さんは「平地でもワイン用ブドウが栽培できることを証明し、幸手から国産ワインを盛り上げていきたい」と力を込めた。









