埼玉新聞

 

「すごく悲しい」「できることから少しずつ」練習場が全焼…広がる支援の輪 将来有望な選手を輩出してきた「片柳棒高跳びクラブ」 火事でポールやマットなど燃える 再建へ全国から寄付の申し出も

  • 火災で施設が全焼した片柳棒高跳びクラブの練習場=10日、さいたま市見沼区西山新田(同クラブ提供)

    火災で施設が全焼した片柳棒高跳びクラブの練習場=10日、さいたま市見沼区西山新田(同クラブ提供)

  • 【地図】さいたま市見沼区(背景薄緑)

    さいたま市見沼区の位置

  • 火災で施設が全焼した片柳棒高跳びクラブの練習場=10日、さいたま市見沼区西山新田(同クラブ提供)
  • 【地図】さいたま市見沼区(背景薄緑)

 将来有望な棒高跳び選手を輩出することで知られる「片柳棒高跳びクラブ」。今月10日、さいたま市見沼区西山新田にある練習場が燃える火災が発生し、マットや助走路、倉庫など施設が全焼した。ポールも100本以上が焼失。選手やクラブ関係者の落胆は大きいが、所属している実業団選手のインスタグラムでの呼びかけなどに応じて、ポールやマットの提供を申し出る支援の輪が、全国へと広がっている。

 出火したのは10日未明。クラブ関係者によると、2カ所にあった棒高跳びのマットは燃え、バーをかけるスタンドは熱で曲がった。助走路のパレットは溶け、倉庫にしまってあったポールは100本以上が焼けて使い物にならなくなった。大宮東署によると、火災の原因は捜査中という。

 片柳棒高跳びクラブの屋外施設は、約15年前から元中学教員で陸上部顧問だったクラブ代表の川上康夫さん(76)や地元の有志が、使用しなくなったマットや助走路を近隣学校などから譲り受け、つくり上げてきた環境だった。

 特に近年の活躍は目を見張るものがあり、全日本中学陸上選手権の男子棒高跳びではクラブに所属する別の選手が2023~25年に3年連続で優勝する快挙を達成。記録の面では、本年度はいずれも市立片柳中学3年の大森蒼以、飯塚俊介の両選手が競い合いながら、ともに中学新を樹立した。クラブにはマスターズの選手も含め約30人が所属。365日、いつでも跳べるのが特長で、市外や県外からも練習に訪れていた。

 愛着ある施設の全焼に所属選手の落胆は大きい。京都大学陸上部でハードル選手だった池田康博さん(74)はマスターズ陸上の十種競技に出るため、約8年前から棒高跳びを習いに来るようになった。念願かない、十種競技に3度出場した池田さんは「ぼうぜん自失。現実として受け入れられなかった。私の生きがいだから」。小学4年から通っている飯塚選手も「何もなくなってしまって、すごく悲しい」と寂しげな表情を浮かべた。

 火災を受け、所属する選手が交流サイト(SNS)で支援を求めると、同調する声が広がり、実際に古くなったマットや使わなくなったポールの寄付の申し出があったという。大森選手は「全国からの支援は本当にありがたい」と感謝する。クラブでは、保護者が中心となって「練習施設火災復旧支援プロジェクト」を立ち上げ、17日からサイトの運用を開始。目標額を1千万円とした支援金と支援物品を募っている。

 燃えた器具やポールなどの処分には多額の費用がかかる見込みで、再建への道は容易ではない。それでも、川上代表は「大変なことになったのは事実だけど、選手の練習場所がなくなってしまうので、今は失望より『次のステップにいかないと』という思いが強い。手作業でも、できることから少しずつ進めていきたい」と未来を見つめている。

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