やめろ…夫婦と長女死亡、家族でパーティー前に 次女が着く前に襲われる「家族と会いたい」 おので襲った男は無期懲役、遺族「到底承服できない。目の前で大切な家族が殺害される絶望、苦しさを、考えて」
飯能市の住宅で2022年12月、夫婦と帰省中だった長女の親子3人が殺害された事件で、斎藤淳被告(43)に言い渡されたのは無期懲役判決だった。公判で起訴内容を否定し続け、被害者への謝罪はなく、自身の主張を繰り返した斎藤被告。極刑を回避した判決を言い渡されても微動だにしなかった。遺族は「到底承服できない」と訴えている。
斎藤被告はこの日、青いジャンパーに灰色のズボン姿で入廷。席についても周囲には目をくれず、無表情で視線を下に落とし続けた。張り詰めた空気が漂う法廷で、井下田英樹裁判長に「被告は証言台に立ってください」と促されると、無言のまま従った。無期懲役の判決を言い渡されても身動きすることなく、判決理由を聞いていた。
遺族は被害者参加制度を利用し、公判中に出廷した際には亡くなった3人について、明るく円満だった家族関係を涙を詰まらせながら振り返り、被告に対して強い処罰感情をあらわにしていた。
被害者一家の次女は、事件当日にクリスマスパーティーをする予定だったが、かなわなかった。「自分に何かできたのか考えて寝れない夜もある」と胸の内を語り、「家族と会いたい。もっと一緒に時間を過ごしたかった」と話した。
次女は父親について、ポジティブで真面目だがジョークを言う気さくな一面もあり、「友達みたいだった」。母は「いつでもサポートしてくれた。かわいい絵を描いてくれたり、一緒に勉強してくれた」と優しい性格を振り返り、長女は努力家で「誰からも愛されて自慢のお姉ちゃん」と話した。3人に対してそれそれ「全部が好き」と述べていた。
遺族は、斎藤被告への無期懲役判決を受けて、「到底承服することはできない」とした上で、「裁判所は私たちの心情意見陳述などを真に理解していただいているのでしょうか」とコメントした。
全く落ち度がない普通の親子の命が唐突に奪われた残虐な事件。結末を見届けようと、判決公判直前の16日午後2時過ぎ、さいたま地裁前には67席の傍聴席を求め164人が列を作った。
■遺族コメント要旨
飯能市の親子3人殺害事件で、殺人などの罪に問われた男にさいたま地裁が無期懲役判決を言い渡したことを受け、被害者遺族が出したコメントの要旨は次の通り。
本日言い渡された判決は、私たち遺族の願いとはかけ離れたものであり、到底承服することはできません。
犯人は、私たちの大切な家族3人の命を奪うという、最も卑劣で残忍な罪を犯しました。
私たちはこの公判を通し、犯人が自身の罪にきちんと向き合い、自分の口で動機を明らかにすること、そして犯人には極刑を求めてきましたが、犯人は罪を認めず反省すらしませんでした。
裁判所は、私たちの心情意見陳述や、数々の証拠によって明らかになった犯行の事実、精神鑑定で示された善悪を理解できることなどを、真に理解していただいているのでしょうか。
3人が受けた、恐怖、痛み、自分の目の前で大切な家族が殺害される絶望、苦しさを、考えていただきたいと思います。
この判決は、3人の尊い命の重さを無視し、犯人に寛大な判決であり、強い憤りを感じています。
検察官には、本判決の不当性を精査後、直ちに控訴いただき、上級審にて公正な判断が下されることを切に希望します。
私たちの心情は、公判での意見陳述や、今回の声明でも述べていますので、被害者遺族やその立場をご配慮いただき、取材はお控えいただけますようにお願い申し上げます。
最後に、私たちはこれからも、3人の尊厳を守るために闘い続けます。
■次女「父と会ったのは結婚式が最後」(以下2月18日配信、第2回公判時の記事)
2022年12月、飯能市の住宅で夫婦と帰省中だった長女の親子3人が殺害された事件で、殺人、非現住建造物等放火、銃刀法違反の罪に問われた、無職の男(43)の裁判員裁判の第2回公判が2月17日、さいたま地裁(井下田英樹裁判長)で開かれた。検察側の証拠調べが行われ、被告の親族や被害者遺族の供述調書が読み上げられ、目撃者による証人尋問が行われた。
被告の母親や姉の供述調書によると、被告は07年ごろから飯能市の住宅で1人暮らしをするようになり、母親から月9万~11万円の生活費の援助を受けていた。母親や姉は定期的に被告と会っており、事件前の様子について、母親は「精神的に病んでいると思ったことはない」、姉は「健康的に過ごしていたように見えた」などと供述していた。
被害者夫婦の次女の供述調書では、「どこの家族よりも仲が良い」という。毎年クリスマスには家族で過ごす慣習があり、事件当日も家族4人が飯能市の家に集う予定で、姉は一足先に家に着いていた。次女は22年12月に結婚式を挙げており、次女が父親と会うのは結婚式が最後だったという。「父はいつもポジティブで笑顔。母はがんでつらそうだったが、家族のために毎日頑張っていた。姉は誰からも愛される自慢のお姉ちゃん」と振り返っていた。
証人尋問では、事件を目撃した近隣住民の男性が出廷。午前7時ごろ、言い争うような声を聞いて外に出たところ、ハンマーのようなものを振りかざす犯人を発見。男性は「やめろ、やめろ」と何回も叫び、犯人は一度だけ男性の方を見たが犯行を継続し、終始無言だったという。
起訴状などによると、被告は22年12月25日午前7時10分から25分ごろまでの間、飯能市美杉台4丁目の住宅で、米国籍の夫=当時(69)=と妻=同(68)、長女=同(32)=の頭や首などをおので複数回殴打して殺害し、被害者宅に放火したなどとされる。
■どんな事件だった 刑事責任能力を問えると判断(以下2023年12月24日配信、起訴時の記事)
2022年12月、飯能市の住宅敷地内で住民の夫婦と帰省中の長女の計3人が殺害された事件で、さいたま地検は2023年12月21日、殺人や非現住建造物等放火、銃刀法違反の罪で、近所の無職の男(41)=同市美杉台4丁目=をさいたま地裁に起訴した。裁判員裁判で審理される。
地検は男の事件当時の精神状態を調べる鑑定留置を2023年2月13日から2度目の延長を経て、8月4日まで実施。さらに同10日から2度目を始め、1度の延長を挟んで12月15日に終えていた。地検は計10カ月に及んだ鑑定留置の結果、男の刑事責任能力を問えると判断した。
起訴状などによると、2022年12月25日午前7時過ぎ、飯能市美杉台4丁目の住宅敷地内で米国籍の男性=当時(69)=に対し、おの(刃体の長さ約7・5センチ)の刃を頭部などに複数回たたきつけた上、別のおの(同約9・8センチ)で後頸部(けいぶ)などを複数回殴打し、死亡させた。さらに、同おので妻=同(68)=と長女=同(32)=の頸部などを複数回殴って殺害した後、住宅内に灯油をまき、火を放って1階リビング天井などを焼損(面積計約22・8平方メートル)させたなどとされる。
地検は男の認否を明らかにしていないが、8月10日に非現住建造物等放火と銃刀法違反の疑いで追送検された際の県警の調べには、殺人容疑を含め全ての容疑について「やっていない」と否認。捜査関係者によると、鑑定留置終了後の県警の調べに対しても、これまでと同様に容疑を否認していたという。動機に関しても一切語っていない。
男は、昨年1月に男性方に止められていた車などに投石し、傷を付けたとして器物損壊容疑で現行犯逮捕された。男性方では一昨年8~12月にも車や門扉を傷つけられる被害が計6回あり、その後、昨年2月までに同容疑で2度再逮捕されたが、いずれも供述を拒み続け、嫌疑不十分で不起訴となっていた。
事件発生から、間もなく1年。鑑定留置が計10カ月間にわたって実施された後の今回の起訴を受け、男の担当弁護士は「被疑者段階で鑑定留置を2回行うことは担当事件の中では初めて。おそらく全国的にも異例中の異例なのではないか。鑑定書を確認した上で、これからの方針を検討したい」と話している。










