奥深い埼玉の仏像 元県立博物館長の林さんが本出版 奈良から江戸にかけて制作された埼玉県内の仏像85尊の変遷をたどり、様式美を解説
2026/03/09/10:47
元県立博物館長の林宏一さん(81)がこれまでの仏像調査をまとめた著書「探訪 埼玉の仏像」(さきたま出版会)を4日に出版した。奈良から江戸にかけて制作された県内の仏像85尊の変遷をたどり、様式美を解説している。1970年から調査を続ける林さんは「56年がかりで一冊の本にまとめることができた。奥深い世界を知ってほしい」と呼びかける。
林さんは1971年以来、県立博物館(現歴史と民俗の博物館)や歴史資料館、県文化財保護課などに勤務。県立博物館長や岩槻人形博物館長を歴任した。現在も市町村や寺から依頼を受け、調査報告書や論文を執筆している。
今回の本には、彫刻史や美術史の観点から際立った仏像85尊を収録した。
熊谷市の東善寺に客仏として安置されていた阿弥陀如来立像(鎌倉時代)は、髪や目鼻立ち、着衣などの特徴から、鎌倉時代を代表する仏師快慶による制作の可能性が高いという。本の中では2017年の調査時について「思いもよらない場所から思いも及ばない名仏師の作品が出現したことで、調査員一同、固唾(かたず)をのんだ記憶がある」と回顧している。
川口市の観音堂に安置された阿弥陀如来坐像(江戸時代)も特徴的な仏像の一つ。頭部を抜き外すと像の内側に小型のマリア観音と十字架が収められており、隠れキリシタンが工夫して造らせた見せかけの仏像とみられる。「全国的にも珍しく、優れた江戸彫刻の名品」と林さん。
調査を続ける中で埼玉の仏像の奥深さを知ったといい、林さんは「後世に残していく意味がある。本を手に取った後で寺や博物館で仏像をじっくり見ると、今まで見過ごしていた新たな発見があるはず」と語った。
問い合わせは、さきたま出版会(電話048・711・8041)へ。









