今年は「花馬」も復活 東松山の上岡観音で絵馬市 長年貢献の保存会会長、1カ月前に亡くなる…妻や孫娘ら、かかわる人ら思い引き継ぐ
関東随一の馬頭観音の霊場として知られる東松山市岡の妙安寺にある上岡観音で19日、例大祭に合わせ、絵馬市(国の選択無形民俗文化財)が開かれた。今年は飾り馬の「花馬」も復活。絵馬市のために長年貢献してきた絵馬市保存会会長の根岸成直(まさなお)さんが1カ月前に亡くなったが、かかわってきた人たちがその思いを引き継いでいる。
▼最盛期は10万人が参拝
上岡観音は、古くは農耕馬を飼う農家や運送業者、最近は牧場や競馬など、馬にかかわる人たちの信仰を集めてきた。昔は例大祭に馬を引き連れて参拝し、「馬体安全」を祈願。購入した絵馬を持ち帰り、お守りとして馬屋に飾ったという。
信仰圏は関東圏に広がり、最盛期には参拝者が10万人、千頭以上の馬が連れられてきた。観音堂から熊谷方面まで人馬で長蛇の列ができたと伝わる。経済的に余裕がある人は、馬を飾って「花馬」に仕立てた。妙安寺の桜井説由住職は「昔の農家は馬を家族の一員のように大事にしていた。人間の子どものお宮参りのように、馬の無事を祈ってお参りに来ていた」と話す。
しかし、昭和30年代になると農業の機械化が進み、農耕馬を飼う農家が激減。参拝者も少なくなり、絵馬市を取り仕切っていた絵馬講も1991年に解散した。その中で、絵馬市のために奔走したのが保存会長の根岸さんだった。
▼孫娘も思いを継承
根岸さんは絵馬市を取り仕切るだけでなく、高齢になっていた絵馬師の後継者を探して制作を依頼。絵馬も伝統的な絵柄を踏まえつつ、ピンクなど色鮮やかなものや、実在の馬をモデルにするなどバリエーションを増やした。最近は部屋の装飾品として絵馬を購入する人も増え、絵馬市はにぎわうようになった。
また、寺や地元の武蔵逍遥乗馬会が協力して、2023年に馬の観音参りが本格的に復活。毎月19日の月縁日に、乗馬会の馬が約3キロを歩いて参拝し、昔のしきたりどおりに祈願を受けている。
上岡観音隣の料理屋の家に生まれた根岸さん。妻の路子さん(81)によると、「『生まれた時から観音様に守られている』と話していた。絵馬市を守ることをライフワークにしていた」という。今年も絵馬市の準備を進めていたが、1カ月前の1月19日、病気のため85歳で亡くなった。
路子さんらが準備を引き継ぎ、開催にこぎつけた今年の絵馬市。孫娘の見村萌々葉さん(26)も駆けつけ、絵馬の販売を初めて手伝った。「昔から絵馬市に興味があり、祖父と一緒にやりたいと思っていた」という。交流サイト(SNS)で絵馬市の発信も行っており、「若い人たちにも広めていきたい」。
▼絵馬を参考に再現
今年は「例大祭を盛り上げよう」と、武蔵逍遥乗馬会が馬12頭を飾り馬に仕立てて「花馬」を復活させた。馬の鞍(くら)を外し、緑や黄色の布の上に華やかな着物の帯を巻いた。花馬を見たことがある人がいないため、絵馬を参考に再現。境内の放牧場を3周し、その中心で桜井住職が祈願を行った。
華やかに着飾った馬を前に、同乗馬会スタッフの冨岡千佳さん(45)は「馬を大事にしていた昔の人の気持ちを伝えられたら」という。オーナーの相川悟さん(63)も絵馬市の伝統を「継承していきたい」と話していた。










