埼玉新聞

 

病気は憎い、でも今の娘がかわいい…国内に10人、知られぬ難病「ローハッド症候群」 指定目指す家族ら

  • 渡辺未来さん(左)と情報交換する橋本恩さん=2月11日、福島県

    渡辺未来さん(左)と情報交換する橋本恩さん=2月11日、福島県

  • ローハッド症候群日本事務局のウェブサイトのQRコード

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 健康に生活していた子どもに突然、急激な肥満や低換気、性格の変化などが現れる原因不明の「ローハッド症候群」という病気がある。国内の患者は10人程度で、さいたま市の橋本光優(こうや)さん(12)はその一人。母の恩(めぐみ)さん(40)は2019年に「ローハッド症候群日本事務局」を立ち上げ、指定難病化を目指している。家族会として交流もあるが、症状や進行はそれぞれ異なるため手探りだ。2月には福島県に住む患者の渡辺瑚々(ここ)ちゃん(3)の家族を訪ね、情報や悩みを共有した。

■小さな体を襲う異変

 「瑚々は最初、心配なほど体が細かった」。母の未来さん(33)は振り返る。健康で発達も問題はなかった。1歳半ごろ体重増加や便秘、斜視が始まり、2歳10カ月ごろ、突然40度の熱を出し肺炎と診断された。前兆といえば前日に唇の色が悪く「こーちゃん、疲れちゃったな」と話していたことくらい。その後、酸素濃度が不安定な日が続き検査でも原因は分からず、後にローハッドの可能性が浮上した。

 患者には1歳半ごろから「急性発症肥満」「低換気」「視床下部障害」「自律神経機能不全」などの症状が現れ、神経節細胞腫の発生率も高い。知名度が低い上、症状が複数の診療科にまたがり早期診断につながりにくい。免疫抑制治療が有効な場合もあるが、指定難病ではないため、多額の出費を強いられる。

 体内の二酸化炭素濃度が高いと性格が攻撃的になる傾向も。瑚々ちゃんも発症後は「怒ってないときはなく、普通の3歳児とは違った」。性格の強さや体の慣れにより、異常な状態でも元気に見えてしまう問題もある。90%未満で呼吸不全とされる酸素飽和度が60%以下でも瑚々ちゃんは「ふらふらする」と話す程度で、入院中でも「元気そうだから」と様子見で終わり、危険な状況に陥ることがあったという。

 特に睡眠中は低換気に陥るため「夜中に命を落とすのが怖い。呼吸が確実になるなら」と気管切開を決意。手術は成功したが、2週間後に突然、手足の冷えや発熱などが起きた。心拍数が下がり、血圧を測ろうにも、手足が冷え過ぎて測れない。顔色は真っ白だった。大勢の医師や看護師で騒然とした病室で、未来さんはぽつんと取り残された。

 解熱剤成分にアレルギーが起き、全身の血管に血栓や出血が生じる合併症が起きていた。奇跡的に回復したが、脳にダメージを受け寝たきりになった。未来さんは「命を失うことを覚悟した状況から生命力を見せてくれた。病気は憎いが、ローハッドの瑚々も瑚々。今の瑚々がかわいい」。

■家族会が希望に

 ただ、瑚々ちゃんが大好きな保育園にはもう通えない。医療的ケア児を受け入れる施設も満員だ。「どうしても保育園みたいな場所で普通の3歳児がする経験をさせたい」と自ら施設をつくることも考えている。

 ローハッド症候群の情報は多くない。「調べるほど患者は短命だったが、事務局のサイトに光優くんがいた。『えっ、11歳(当時)だって!』と希望になった」と未来さん。事務局設立は難病指定を目指すためだったが、かけがえのない家族同士の絆が生まれた。恩さんも瑚々ちゃんに「昔小柄だったことや顔つきが光優にそっくり。人ごとと思えない」と心を寄せている。

 未来さんは家族会に「正直、軽症の子はいいなと思う。でも多くのことを吸収したいし、今の瑚々を知ってほしい」と前向きだが、容体の急変とローハッドとの因果関係は不明で「他の親に不安を与えるのでは」と案じる。恩さんは「心配は無用」と励まし、「早期にローハッドとして治療できていれば。日本には気付かれていないローハッドの患者は多いと思う」と周知の必要性を強調した。

 恩さんは指定難病化のための広報活動などへの支援を呼びかけている。寄付の振り込み先は口座名「ローハッドショウコウグン ニホンジムキョク」ゆうちょ銀行029店・当座預金0110342。

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