埼玉新聞

 

あと1、2カ月の命と言われても…25歳で白血病を発症、諦めず日本骨髄バンク誕生へ行動 実現させた女性が講演 熊谷女子高で献血の意義を理解する研修会 献血の協力、ドナー登録を期待「献血から人の命を救える」

  • 高校生に講演する大谷貴子さん

    高校生に講演する大谷貴子さん=熊谷市末広の県立熊谷女子高校

  • 高校生に講演する大谷貴子さん

 熊谷市赤十字奉仕団熊谷分団は、同市末広の県立熊谷女子高校で献血の仕組みや社会的意義を理解するための研修会を行い、加須市在住で全国骨髄バンク推進連絡協議会副会長の大谷貴子さん(64)が講演した。大谷さんは25歳の時、白血病を発症。当時は国内になかった骨髄バンク設立を求めて行動を起こし、病気が治った後も活動を続け、実現させた。講演は、同校で保健委員を務める生徒38人らを対象に実施。大谷さんは、「高校生も献血で人の命を救える」と訴えた。

 大谷さんが発病した時、白血病は完治する可能性が極めて低い病気とされていた。「あと1、2カ月の命だと言われても、諦められなかった」と振り返る。英語が理解できたため、米国の医学書を読み、主治医も知らなかった骨髄移植という治療法があることを発見。適合する白血球の型を持つドナーが見つかるように、骨髄バンクという組織が存在することも知り、設立を目指して動き始めた。

 ある新聞社が大谷さんの願いを記事にすると、自宅に協力を申し出るたくさんの電話がかかってきたという。「日本にも手を差し伸べてくれる人がたくさんいると分かり、とても心強かった」と大谷さん。その後、母親と適合することが判明し、骨髄移植を受けて回復。大谷さんは活動を継続して130万人の署名を集め、1991年12月に日本骨髄バンクが誕生した。

 同協議会の第2代会長を歴任した大谷さんは白血病以外にも、医療に関わるソフト、ハード面の改善に力を注いだ。末期の胃がんを患っためいが、39歳以下のため介護保険のサービスを利用できないと知ると、終末期に自宅療養が可能な制度導入を働きかけた。独自に取り入れる自治体が、増えつつあるという。

 入院中の子どもが学校の授業を受けられたりするよう、病室にWi-Fiの設置を要望。尿漏れパッドを捨てられず困っている男性のため、男子トイレの個室にごみ箱設置を提案するなどしてきた。大谷さんは、こうした配慮は多様性を認められる社会につながるとして、「皆さんの手で、そんな世の中をつくってほしい」と語りかける。

 少子高齢化で献血の協力者は減り続け、18歳から54歳までとより厳しい年齢制限がある骨髄バンクのドナー登録者も近い将来、大量に“定年”を迎える見通しだ。大谷さんは献血を機にドナー登録する人が多いと指摘し、「保健委員の皆さんが率先して献血し、広めてもらえれば。献血から始めて、社会を変えていってほしい」と期待した。

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