埼玉新聞

 

放置されるペット増加…飼い主の死亡、介護施設への入居で 保護団体も年間コスト800万円超でギリギリ

  • 「動物にも福祉の問題があることを知ってほしい」と話すNPO法人ねこひげハウス代表の石川砂美子さん(右)とボランティアスタッフの高橋章子さん

 健康管理や食事など十分な世話をされず、虐待や多頭飼育崩壊による劣悪な環境に置かれている猫や犬を救おうと、NPO法人「ねこひげハウス」は八潮市を中心に動物保護活動をしている。代表の石川砂美子さんは高齢者宅で飼われていたペットが飼い主の死亡や介護施設への入居などでそのまま自宅に取り残されるケースが増えていると指摘。「コロナ禍でペットを飼う人が急激に増えた。動物の命を軽く考えないで」と新たな社会問題化に警鐘を鳴らしている。

 動物好きの石川さんが活動に取り組むようになったのは約11年前。多頭飼育崩壊寸前だった市内の男性宅の猫たちを保護したことが始まりだった。その家をシェルターとして借り上げ、現在は猫102匹と犬2匹を保護している。2015年にNPO法人化し、里親探しやみとり、緊急保護、地域猫への正しい理解や不妊手術などを行っている。

 普段は約30人のボランティアスタッフと交替で猫や犬の面倒を見る石川さん。自宅は別にあるが、たまにタオルなどの日用品を取りに帰るだけで、24時間365日ほとんどの時間を動物たちと共に過ごしている。

 シェルターで暮らす猫の3分の2が7歳以上の老猫。約3割ががんや腎臓病など何らかの病気を発症し、交通事故で大けがした猫もいる。

 普段の食事や掃除、薬や病気の治療費は年々増え、年間の維持費は800万円以上。支援者も徐々に増えてはいるが、常にぎりぎりの状態という。それでも「この子たちを救うために活動を続けていかなければ」との思いが行動を支えている。今月からクラウドファンディングにも挑戦し、当面の運営資金の確保を目指している。

 コロナ禍で新たな社会問題も出てきている。ペットを飼う人が急激に増えたが、高齢者宅で飼われていたペットが飼い主の死亡や介護施設への入居などでそのまま自宅に取り残されるケースが近年増えているという。「コロナ禍で寂しい気持ちは理解できるけど、動物の命を軽く考えないでほしい」と石川さんは訴える。

 オランダや独など欧州に比べて日本は動物愛護に対する意識や法整備も遅れており、行政だけでは解決できず、多くの愛護団体にしわ寄せがきているという。「大げさに聞こえるかもしれないが、人間だけでなくペットを含めた地域全体の包括的なケアが必要」と危機感を募らせる石川さん。「高齢化(少子化)でペットを取り巻く環境も大きく様変わりしている。家族の一員として本当に最期まで育てられるのか、自分に万が一のことがあったら誰に引き取ってもらうのか、家族や親族とよく相談してから覚悟を持って飼ってほしい」とモラルの向上を呼びかけている。

■支援の相談、問い合わせ

 同団体ホームページhttps://nekohigehouse.org/、または石川さん(電話090・2316・4838)

ツイート シェア シェア