埼玉新聞

 

安心、安全へ「大きな一歩」 ALS患者支援、埼玉県など人工呼吸器メーカー4社と協定 停電時の安全確保

  • 協定を締結した大野元裕知事(右から3人目)と患者団体や人工呼吸器メーカーの代表者ら=26日、埼玉県庁

 筋肉が次第に痩せて力がなくなる指定難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の安全確保を図るため、県は26日、人工呼吸器を扱うメーカーなど4社や日本ALS協会県支部と協定を締結した。災害時の停電による人工呼吸器の停止などに備え、事前に情報共有し、必要に応じて関係機関に通報する。県によると、人工呼吸器メーカーやALS患者団体と都道府県が協定を結ぶのは初。

 人工呼吸器を使用している患者は災害時の停電やバッテリー切れなどにより生命維持に危険が及ぶ恐れがある。協定に基づき、同県支部は同意を得られた患者の個人情報を県やメーカーなどと共有。災害時にメーカーが患者の状況を確認するとともに、危険が見込まれる場合、県内保健所が市町村や消防本部に通報するなどして迅速に情報共有し、患者の命を守る。

 協定を締結したのは人工呼吸器メーカーのチェスト(東京都文京区)、フィリップス・ジャパン(東京都港区)、フクダライフッテック関東(さいたま市桜区)と医療機器輸入商社の東機貿(東京都品川区)の4社。

 締結式には、同県支部の支部長で2012年から症状が出たという中村秀之さん(53)=さいたま市桜区=が車椅子で出席し、メッセージを妻の静香さん(46)が代読。「私自身も夜は呼吸器を装着しており『寝ている間に停電になって内部バッテリーも消費しきったらどうしよう』と考えることが少なくない」と不安を明かし、「行政と呼吸器メーカーが協力することになり、患者にとって大きな安心感につながる」と協定締結を歓迎した。

 同協会県支部の丸木雄一事務局長によると、県内でALSと申請しているのは約500人で、在宅で医療的ケアを受け、災害時に支援が必要な人は100人程度いるとみられる。埼玉精神神経センター(さいたま市中央区)のセンター長も務める丸木事務局長は「東日本大震災の時も保健所だけでは患者宅を回ることがとてもできなかったが、一軒一軒回ってくれたメーカーから次々に報告が入った」と企業の協力に謝意を示した。

 大野元裕知事は「メーカーや市町村の協力を得て、災害弱者のALS患者にとっての危険性を回避するため、(協定が)大きな一歩となった」と協力の意義を強調した。

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