埼玉新聞

 

「つながり」大切に、ゆっくりと さいたま市「不登校支援センター」 教諭4人が担当、本年度開設

  • 不登校等児童生徒支援センターの(右から)船水光加さん、山田大童さん、内野多美子さん、荒木田悠さん、大高恭介さん=さいたま市見沼区堀崎町

 さいたま市教育委員会が本年度に開設した「不登校等児童生徒支援センター(通称Growth)」。5月23日からオンライン授業を開始し、7月31日時点で、小学生35人(男子18人、女子17人)、中学生61人(男子38人、女子23人)の計96人が利用している。「つながり」を大切に、7月15日には初めて、プラネタリウムのリアル体験学習を実施し、27人が参加した。同様の取り組みは全国的に珍しく、担当者は「一人一人の子どもたちの状況を把握し、試行錯誤を重ねながら、ゆっくりと進めていきたい」としている。

 不登校の児童生徒は全国的に右肩上がりの傾向で、さいたま市も同様の数値を示している。2020年度の不登校の理由は、小学生が「無気力、不安」「生活リズムの乱れ」「親子の関わり方」。中学生が「無気力、不安」「友人関係」「生活リズムの乱れ」が主な要因だった。新型コロナウイルスの影響は、現時点で判明していないという。

■生活リズム改善を重視

 担当する4人の教諭が、授業内容を話し合って決めている。生活リズムを改善するため、1日3回のホームルームを重視。朝(午前10時)、昼(午後1時10分)、帰り(午後2時5分)に15分間ずつ実施する。授業は小学生と中学生に分かれ、30分授業を3時限。自己紹介シートをパワーポイントで作成したり、星を調べたり、英語の聴き取りや筆記体を学んだ。個別の面談や保護者会も行っている。不登校の児童生徒はオンライン授業への参加で、「指導要録上の出席扱い」としている。

 授業内容を取りまとめている船水光加教諭は「学びのきっかけになれば良いという思いで進めている。朝のホームルームから、つながって、やりとりをして、とても楽しい」。小学生を担当する山田大童教諭は「今までどこにもつながれていない子たちとつながれた。セーフティーネットの役割を果たせて、仕事としてやりがいを感じる」と話す。

 中学生の授業は、荒木田悠教諭と大高恭介教諭が担当。荒木田教諭は「1~3年生のどの学年でも親しみやすい内容にしている。次回も入ってきてほしいと思いながら進めている」。大高教諭は「一方通行の指導的な授業ではなく、子どもたちが協働できる内容を心がけている」と語る。

■チャットで「おはよう」

 子どもたちは顔出しせず、声を出さず、チャットで対応しているが、変化も起き始めている。子ども同士が朝のホームルームで、「おはよう」「おはよう」とチャットであいさつ。小学生の否定的なチャットに、中学生が「どうしたの」「大丈夫だよ」と反応したこともあったという。

 リアル体験学習会は、市青少年宇宙科学館(浦和区駒場)で実施した。小学生15人、中学生12人の計27人が参加。太陽や月の動き、星座を学習し、先生たちが自己紹介した。多くは保護者と一緒だったが、担当者は「私たちもドキドキだった。子どもたちがよく足を運んでくれた」と振り返る。

 体験学習後のアンケートには、「楽しかった」「理科をもっと勉強したくなった」「先生や子どもたちに会えて良かった」と感想が書かれていた。「初めてリアルで会って、話しかけてみようとしたときに、どうしても話しかけることはできませんでした」という内容もあったという。

 小学校長を経験している市教委総合教育相談室の内野多美子室長は、リアル体験学習について、「会うことがいいなって思ってくれたら」と期待している。一方で、プレッシャーに思う子もいるため、慎重な対応が必要と考えている。体験学習を含め1学期を順調に終えたと判断しており、「その子たちのタイミングを大事にしてあげたい。いつ入ってきてもいいし、いつ出ていってもいい。1分でも2分でもつながってくれたら、先生たちは笑顔で迎える」と話していた。

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