練習を見学し衝撃!障害あってもできるスポーツがある 大宮在住、電動車いすサッカーのプレーヤー…夢は日本代表でW杯に 助けてもらうのだから「自分も誰かを助けたい」…母親とヘアドネーションも実施
電動車いすサッカーをご存じだろうか。専用の電動車いすにフットガード(バンパー)を取り付けて行うサッカー競技だ。コントローラーを手や顎などを使って操り、重さ約200キロの電動車いすが時速10キロで激しくぶつかり合う。比較的重度の障害のある選手が多い。埼玉県さいたま市大宮区在住の高坂真規さん(19)は、電動車いすサッカーでワールドカップ(W杯)出場を目指している。
■筋ジストロフィー
高坂さんは、生まれつき筋力が徐々に低下していく難病「筋ジストロフィー」を患う。市立大宮小学校の普通学級に通っていた4年生の2学期ごろから、よく倒れるようになった。3学期には完全に車いすの生活に。そのころ、日本筋ジストロフィー協会で知り合った先輩に誘われ、電動車いすサッカーの練習を見学した。「障害があってもできるスポーツがあるんだ」。衝撃とうれしさが募った。
6年生で蓮田市内のチーム「ブラックハマーズ」に加入。プレーヤーとしてスタートを切った。中学、高校は蓮田特別支援学校に進んだ。
■ヘアドネーション
競技用電動車いすを使用するに当たり、本人の障害に合わせた改造が必要となった。高坂さんの場合、障害が重く、背骨が左右に湾曲しているため、改造に時間も費用もかかる。高坂さんは、高額の費用の一部を捻出するため、クラウドファンディング(CF)に挑戦した。同時に「助けてもらうのだから、自分も誰かを助けたい」と、髪の毛を医療用ウィッグの素材として寄付するヘアドネーションを決意した。中学2年生だった。
昨年10月、高坂さんの姿は市内の美容院に。5年間伸ばした髪をいよいよ切る時がきた。「生まれて初めて美容院に来たので緊張する」と高坂さん。60センチ髪を切り、短く整えるまで約1時間。一緒にヘアドネーションを実施した母親の弘美さん(61)は「本当にたくましくなった。サッカーもほかのことも頑張ってほしい」とほほ笑んだ。NPO法人と協力し、ヘアドネーションを行っている美容院「ヘア&メイク アース」の美容師、大内拓也店長は「こういう形で関われてうれしい」と話した。
■ステップアップ
ブラックハマーズは2018年に長野県で行われた全国大会で準優勝。高坂さんは、日本代表候補の選考合宿に呼ばれたものの、最終的な代表選手8人には選ばれなかった。
23年にオーストラリア・シドニーで開催された第4回電動車椅子サッカーW杯で日本は7位に終わった。高坂さんは昨夏、さらなるステップアップを目指し、東京・多摩地区を拠点とするチーム「レインボー・ソルジャー」に移籍。「26年にアルゼンチンで行われるW杯に日本代表で出場したい。そして、いつか電動車いすサッカーのプロになりたい」。夢の実現に向けて踏み出した。