埼玉新聞

 

貴重な存在、奇抜な衣装と化粧で宣伝「チンドン屋」 幼稚園の頃から憧れ…夢かなえ埼玉唯一のプロに

  • 柔道整復師でもある県内唯一のプロのチンドン「あけぼの屋」古沢真弘さん=上尾市二ツ宮、古沢接骨院

 奇抜な衣装と化粧を施し、チンドン太鼓を「チンチン・ドンドン・チンドンドン」と鳴らしながら街を歩いて、店舗の新装開店などの宣伝をする「チンドン屋」。昭和時代にはあちらこちらで見掛けた光景だが、今や貴重な存在だ。

 上尾市の古沢真弘さん(57)は、埼玉で唯一のプロのチンドン「あけぼの屋」の代表を務める。高齢者には懐かしく、若者には珍しく、子どもたちは面白がって喜ぶチンドンを愛してやまない。祖母の家があった東京・深川の商店街で当たり前のように慣れ親しんでいたチンドン。「幼稚園の頃から憧れていた。音を通じて人と交流ができるのがチンドンの魅力」と話す。

 大学卒業後、外資系航空会社に就職。愛知県で中部国際空港セントレアの立ち上げも携わったが、当時勤めていたニュージーランド航空が撤退したのを機に40歳で退職。国家資格の柔道整復師を取得するため3年間専門学校に通った。収入のメインを接骨院開業で確保し、同時にかねて夢だったチンドンの道を模索。名古屋のチンドングループに加入し、チンドン太鼓をたたき始めた。

 2011年、生まれ育った上尾市に戻り古沢接骨院を開業。本業を軌道に乗せるとともに、3年間群馬県高崎市のチンドングループで活動した後「上尾チンドン倶楽部」を発足した。18年には富山県で行われた「全日本チンドンコンクール」に出場、優勝を果たした。

 そして「アマチュアではなくプロでやりたい」との夢をかなえ、20年1月に「あけぼの屋」を立ち上げた。編成はチンドン太鼓、ゴロス(大太鼓)、管楽器2人の計4人。コロナ禍で祭りや新装開店などの営業がなく厳しい状況が続いたが、イベントに呼ばれ歓迎されることも増えてきた。

 「埼玉のプロのチンドン屋」として県内外で活躍する将来を思い描く。「チンドンは心が解き放たれる。体が動かなくなるまで続けたい」

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