国内屈指の出荷量…年間800トンのウナギを出荷 見沼区の川魚問屋「鯉平」 熟練の職人がさばいたウナギ、最後は必ず職人の手焼き 顧客に寄り添った商品提供 「加工品の質は圧倒的」と自信
1897(明治30)年創業の川魚問屋「鯉平」(さいたま市見沼区)。年間約800トンのウナギを出荷し、消費地問屋として国内屈指の出荷量を誇る。活魚から加工したウナギまで幅広く展開し、全国約500店以上のウナギ専門店や料亭などに販売している。
工場での作業が始まるのは午前2時頃。熟練の職人がさばいたウナギを串打ちし、機械で焼く。ウナギによって火加減を調整しているが、最後は必ず職人の手で一枚一枚焼いている。産地や大きさなど顧客の希望に寄り添った商品提供にもこだわり、清水亮佑社長(39)は「国内のリーディングカンパニーとして、加工品の質は圧倒的だと思っている」と自信をのぞかせる。
清水社長は大学卒業後、大手証券会社に就職し、厳しい営業の世界に身を置いた。その後入社した鯉平について「最初は非常にぬるく感じ、これでいいのかと思った」と振り返るが、社員の技術の高さや証券マンとは異なる営業の方法に触れるうち、思いは変わっていく。「大手だから、有名だからいいわけじゃない。うちにはうちの良さがあって、それが続いてきた秘訣(ひけつ)と感じるようになった」
創業当初は鯉の卸問屋だったが、祖父がウナギの仕入れ先開拓に成功し、父は飲食事業の道を拓いた。「存続のため、動物のように進化していく風土がある会社。だから新しいことへの挑戦に否定的な人は誰一人いない」と述べる清水社長で5代目だ。
近年も新たな商品が誕生している。食品ロス削減を目指し考案された「ウナギスナック」。国内の人口が減少する中で、海外への加工品輸出を強化しようと開発されたグルテン・アルコールフリーのたれ。清水社長は「業界の課題を解決し、商売につなげていく。売れるものを売るのではなく、その仕事が誰かのため、何かのためになることを、みんなすごく意識している」と語る。
ウナギ屋の後継者を社員と同待遇で3年間雇って技術を伝授する育成支援は、職人不足を背景に始め、10年近く続いている。まちのイベントや学童でウナギを焼いて食べる職業体験を実施するなど、若い世代への魅力発信にも力を入れる。
入社時に30人ほどだった従業員は約160人まで増えた。「常にプレッシャーはあるが、同じ方向を向き、自分ごととして考え行動してくれる従業員がいるから一人じゃないと感じる」と清水社長。そして、こう締めくくった。「目標は会社を続けること。なぜかというと業界のため。とにかく、そこはぶらさない」
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鯉平 さいたま市見沼区卸町1の23(電話048・682・0525)










