埼玉新聞

 

「対比が利いた選挙戦だった」県内最年少、33歳の市長が誕生 埼玉・鶴ケ島 498票差の接戦を制し現職破る 副市長と教育長「職員から選抜を」と考え示す

  • 鶴ケ島市長選で初当選し支持者らと万歳する小川尋海氏(中央)=26日夜、鶴ケ島市内

    鶴ケ島市長選で初当選し支持者らと万歳する小川尋海氏(中央)=26日夜、鶴ケ島市内

  • 鶴ケ島市長選で初当選し支持者らと万歳する小川尋海氏(中央)=26日夜、鶴ケ島市内

 任期満了に伴う鶴ケ島市長選は26日投開票され、無所属新人で元市議の小川尋海氏(33)が、無所属で現職の斉藤芳久氏(75)を破り初当選した。埼玉県などによると、記録に残る範囲では、1977年の草加市長選で当選した36歳の今井宏氏(当時)を下回り、小川氏は県内最年少市長となる。小川氏は2009年以来16年ぶりとなった選挙戦を498票差で制し、「世代交代」を印象づけた。取材に「厳しい戦いだった。鶴ケ島市民は選挙を望み、変化を期待していた。市民と共に鶴ケ島を変えていきたい」と述べた。斉藤氏は「安定した市政運営」を提唱し企業誘致による定住者の促進などをアピールしたが、及ばなかった。当日有権者数は5万8335人(男2万8616人、女2万9719人)。投票者数は2万1730人(男1万478人、女1万1252人)。投票率は37・25%(男36・62%、女37・86%)で、選挙戦となった09年(38・89%)を1・64ポイント下回った。

 鶴ケ島市長選で初当選を果たした小川尋海氏。同市長選としては2009年以来16年ぶりとなった選挙戦で、駅立ちやインターネット広告などを駆使し、地道に知名度を拡大。498票差の接戦を制し、「世代交代」を印象づけた。「これまでにないスピード感で、市民と共に鶴ケ島を変えていく」と意気込みを語る。県内最年少となる市長には、行政のコスト削減や人口減少社会への対応策などが課題となる。

 初当選が決まった26日夜、同市三ツ木の選挙事務所には支持者ら15人ほどが集まり、拍手が湧いた。「市民は鶴ケ島に、新しい風が吹くことを待ち望んでいた」。小川氏はこう喜びを語った。

 小川氏は医師で、23年から市議を務めてきた。政党の後ろ盾や大きな支援組織を持たず、市長選出馬にあたっては知名度の向上が課題だった。今年4月から駅を中心に街頭立ちを始め、乗降客らにアピール。8月からは、主に動画投稿サイト「ユーチューブ」に、自身のインターネット広告を出した。

 市議を自動失職し、迎えた7日間の選挙戦。小川氏は一日10時間以上、選挙事務所の外に出て訴えを展開した。「運動量は現職よりも多かったと自負している」と言い、「ネット広告を行えたことも大きかった。多くの市民の目に触れることができた」と手応えを説く。

 公式ブログの閲覧数も伸び、選挙期間中には「5万人を超えた」という。

 一方、3選を目指した現職の斉藤芳久氏は初出馬の17年と21年にいずれも無投票で当選し、市長に就いた。自身初の選挙戦となった今回は、自民党県議が選対本部長に就くなどして組織を支えた。

 両氏の年齢差は42歳。小川氏は「対比が利いた選挙戦だった」と位置づけつつ、33歳という年齢に「若すぎるから票を入れないという声もあり、メリットもデメリットも感じた」という。

 斉藤氏は敗北から一夜明けた27日、取材に「陣営にも市民にも『大丈夫だろう』という気持ちがあった。それも含めて、私の不徳の致すところだ」と振り返り、小川氏のスタイルについて「ネットと駅立ちで票を取る。新しい選挙なのだろう」と語った。

 小川氏は「未来への投資」をテーマに据え、健康づくりと子育て世代への支援を公約の柱に置く。就任後に着手したい取り組みの一つに「コストカット」を挙げる。「世代間で格差がつきやすいサービスは見直しが必要だ」と主張する。かつて自身が在籍した市議会の対応などにも、交渉力やバランス感覚が求められそうだ。

■初当選の小川氏、副市長と教育長「職員から選抜を」

 鶴ケ島市長選で初当選した小川氏は26日、副市長と教育長の人事について「市職員の中から試験で1人ずつ選抜したい」と述べ、小論文とプレゼンテーションによる選考を行うとの考えを示した。当選決定後の取材に答えた。

 小川氏は、選抜試験について「なるべく早い時期に行いたい。試験問題は既に考えてある」と説明。27日には、取材に「自分自身は行政経験が乏しいので、鶴ケ島市を知っていて長く働いている人から選びたい」とし、「入庁から3~5年の職員でも受け付けようと思う」と語った。

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