埼玉新聞

 

12年ぶりの参院選と同日選だった埼玉・飯能市長選 現職の新井氏が再選 投票率が大幅増も基礎票固め混戦制す 「(4氏に)入れる理由がない」「消去法で決めるしかない」と頭を悩ませる市民の声も

  • 再選を果たし、花束を持って喜ぶ新井重治氏=21日午前0時ごろ、飯能市仲町

    再選を果たし、花束を持って喜ぶ新井重治氏=21日午前0時ごろ、飯能市仲町

  • 再選を果たし、花束を持って喜ぶ新井重治氏=21日午前0時ごろ、飯能市仲町

 20日投開票の埼玉県飯能市長選は、いずれも無所属で、現職の新井重治氏(72)が、元市議の野口和彦氏(50)、元市長の大久保勝氏(72)、元市議の野田直人氏(68)の3人を破り、再選を果たした。12年ぶりの参院選との同日選で、投票率は60・16%と前回選挙の39・63%から20・53ポイント増加。新井氏は基礎票を固め、次点の野口氏を約3500票離した。

 20日午後11時50分ごろ、仲町の選挙事務所で、新井氏は集まった支持者らと共に万歳で当選を祝った。勝因について「対話重視のまちづくりという方針が浸透した」と述べ、2期目に向けて「1期目を継続しつつ、子育て支援、高齢者、障がい者支援、まちづくりに力を入れる」と意気込んだ。

 現職、元職、新人の4人が立候補し、激しい選挙戦に。自民は新井氏と野田氏の2人を「友情支援」し、いずれも推薦しなかった。保守票が4氏に分散し、反現職票も3氏が分け合う形に。投票総数が前回から約1万3千票増となる中、基礎票を固めた新井氏が混戦を制した。

 財政再建や企業誘致、土地利用計画の見直し、学校給食の無償化など、4氏の訴える公約には共通点が多く、違いの見えづらい論戦だった。街頭演説を聞いていた市民からは、「(4氏に)入れる理由がない。消去法で決めるしかない」と頭を悩ませる声もあった。

 争点の一つになった、飯能駅前の都市計画道路「久下六道線」の拡幅工事は前市長の在任中から凍結しており、推進派は新井氏だけだった。新井氏は歩行者の安全や防災を理由に、整備の必要性を訴えた。落選した3氏は事業費増大への懸念から凍結を主張しており、新井氏は「ここで止まれば先がなかった。着々と進めるので、期待していただければ」と安堵(あんど)の表情だった。

 21日に市役所で当選証書を受け取った新井氏は、「一つのイスを4人で競って、厳しかった」と選挙戦を振り返った。市は本年度から、全庁的に財政を見直す「緊急財政対策」に取り組んでいる。限られた財源で、学校給食の無償化や福祉の充実など、掲げた公約をどう実現していくか、手腕が注目される。

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