参院選・埼玉選挙区、勢力図が一変 参政・大津氏、初当選で「外国人問題、県民に刺さったのでは」 再選の立民・熊谷氏「新興政党へ風が埼玉でも吹く中、既存政党として違う点をアピールできたら」
参院選は20日投開票され、21日未明に埼玉選挙区(改選数4)の4議席が確定した。全国的に堅調だった参政党の新人が初の議席を獲得し、実績を訴えた立憲民主党の現職が再選を果たした。自民党の現職が4選し、国民民主党の新人が初当選。公明党と共産党の現職がいずれも落選し、県内の勢力図は一変した。
■熱心な支持者、運動活発 大津力氏・参新
21日午前1時35分に当選確実が伝えられると、飯能市の参政新人の大津力氏(53)の事務所は拍手に包まれた。2度目の国政挑戦で議席を獲得。集まった支持者は「やっと(当確が)出ました」と喜びを分かち合った。
混戦を制した理由について、大津氏は「外国人問題はしっかりと対応していくと声高らかに訴えたから、県民に刺さったのではないか」と述べた。
党が掲げたキャッチフレーズは「日本人ファースト」。賛否両論を含め交流サイト(SNS)などで連日、話題に上がった。
大津氏は「行き過ぎた外国人の優遇政策や過度な移民の受け入れには反対ということでの日本人ファースト。移民の受け入れは主に労働力を確保したいということだが、経済のために住民が犠牲になってはいけない。まずは暮らしを守るということでの日本人ファーストが刺さったと思う」と分析。公示前はそこまで外国人問題を口に出していなかったが、選挙が始まってから日本人ファーストが報道されるようになった。
風が向いてきたと手応えを感じたのは選挙戦中盤。神谷宗幣代表がテレビの討論番組に出て伸びていったという。
神谷代表は期間中、県内に2度応援に駆け付け、選挙運動最終日には千人近くの支援者が集った。次第に高齢者の支持も増え、「90歳以上の方に『次の世代を頼みます』と言われた」。
熱心な支持者について大津氏は「運動量が他の党と比べて多かったのではないか」と、積極的な応援が勝因に結び付いたとの見方を示した。
■接戦に準備不足認める 熊谷裕人氏・立現
さいたま市大宮区にある選挙事務所で静かに開票速報を見守っていた立民現職の熊谷裕人氏(63)は21日午前1時過ぎに再選が確実になると、陣営関係者と共に胸をなで下ろした。支援者に感謝を述べ、「これまで以上に国民の皆さんの声を聴く機会をつくり、国政に運んでいきたい。国会議員の中でも一番身近な参議院議員と言われるような活動をしていきたい」と決意を新たにした。
1期目は新型コロナウイルスの影響を受け、任期の約半分は思うように活動できなかった。「まだまだやりたい政策がある。埼玉選挙区でもう6年、皆さんによし、おまえやっていいよという声を頂いて、もっと市民に寄り添った政治を実現できる国会の風景をつくりたい」とアピールした。
街頭演説では、さいたま市議時代から掲げる「子ども真ん中」とともに物価高対策を強調。「物価高をきちんとストップできる、私を信じてくださいと訴えたことが、有権者の皆さんに受け止められた」と振り返った。
日付が変わっても当確が出ない接戦には「準備不足だった。新興政党への期待感という風が埼玉でも吹く中、既存政党の一員として、政策や国会対応など違う点をもう少し違った形で有権者にアピールできたら」と語った。
■終盤追走、3選届かず 矢倉克夫氏・公現
税制改革や中小企業支援を掲げた公明現職の矢倉克夫氏(50)。終盤の追い上げも3選は届かず、さいたま市浦和区の選挙事務所は重たい空気に包まれた。2期12年の実績を前面に押し出したが、「私自身の政策の伝え方、伝わらなかったところがあるのは、政治家として私の足らなかったところ」と唇をかんだ。
「人のため」が「自分のため」にも返ってくる、支え合いの理念をつくる政治家を目指してきた。「負担は増えるけど、自分に返ってこないという不満が中間層にある」と社会に充満する閉塞(へいそく)感に思いをはせ、コロナ禍では一律10万円給付のために尽力。「無党派の人にどれだけ訴えられるかがテーマ」と今回の選挙戦に臨んだ。
公示後に劣勢が報じられると、党内でも票固めの超重点区に指定された。11日に武蔵浦和駅西口で行った街頭演説では斉藤鉄夫代表が応援に入り、「日本の平和を守る国際交渉の場をつくる仕事をさせたい。実現するまで7年かかった消費税の軽減税率も先頭に立ってやってきた」と能力の高さをアピールした。
矢倉氏は「与党に対する批判を受け止め切れなかったのは、当然ある。だが、ひとまずは改めて感謝しかない」とし、駆け付けた支持者らへ感謝の思いを伝えた。
■重点区も再選ならず 伊藤岳氏・共現
落選が決まった共産現職の伊藤岳氏(65)は、さいたま市大宮区の共産党県委員会本部で、「残念な結果。私たちの総量が足りなかった」と語った。党本部は議席を持つ埼玉を重点選挙区と位置付け、再選を目指したが、「宝の議席」を死守できなかった。
「4度目の正直」で初当選した2019年参院選以降、国会での発言数は県選出議員で最多の202回と、実績を強調。消費税の5%緊急減税、コメの増産、物価上昇に応じて引き上がる年金システムの実現などの公約を掲げた。党員の高齢化が課題となっていたが、シールボードを活用して、駅頭で若者へアプローチ。消費税減税についても財源を示すなど、政策の独自性を訴えたが及ばなかった。
公示日の3日から、志位和夫党議長が県内入り。「現場の声で政治を動かす伊藤岳。皆さんが生んだ素晴らしい政治家をもう一度国会へ送ってほしい」と訴えた。
伊藤氏は街頭演説で、「人権をないがしろにする政治は断じて許さない。自公政治から今こそ転換する時だ」と主張していた。選挙戦を振り返り、「悪政にあらがい、差別分断と闘い、憲法を守ってほしいという新しい支持者がどんどん広がった。自公を少数に追いやった後の変化を政治でつくり出していきたい」と話した。










