<25参院選・争点の現場から>対米交渉募る不安 迅速な情報提供求める声/関税
参院選は後半戦に。物価高や公共整備、東京都との生活格差などの課題を、それぞれの現場から報告する。
◇
参院選真っただ中の7日、トランプ米大統領は既に関税を課している自動車、鉄鋼・アルミニウム製品を除く日本からの全輸入品に対して8月1日から25%の関税をかける方針であることを自身の交流サイト(SNS)で表明した。
今年の春闘では平均賃上げ率が5・25%と2年連続で高水準を記録したものの、県内中小企業経営者からは「実感が全くない」との声が依然として多い。関税発動が約2週間後に迫る中、日本経済の“失われた30年”からの脱却を左右しかねない対米交渉をどこの政党に委ねるか、「外交・経済政策」も大きな争点となっている。
■製造業4割マイナス影響
ぶぎん地域経済研究所(さいたま市大宮区)が県内企業に行った米国関税政策の影響調査(153社回答)では、製造業の約4割が直接または販売店経由で米国向け輸出を展開。素材関連の80・0%、加工品関連の58・3%が「マイナス影響がある」と回答した。
同研究所では個人消費や企業の設備投資意欲を鈍化させる可能性が高いとして実質県内総生産(GDP)の成長率を年初予想の1・2%から0・8ポイント減の0・4%に下方修正。吉竹章主任研究員は「対米輸出は日本全体の輸出量の2割程度だが、各企業が設備投資を先送りすることになれば(輸出が好調な)一般機械や建設機械などにも影響が及ぶ可能性がある」と懸念する。
■5月自動車輸出額25%減
財務省の貿易統計速報によると、5月の米国向け輸出額は前年同月比で11・1%減少。特に自動車は同24・7%減とトランプ関税の影響を大きく受けた。
エンジン部品などの金属加工会社では「今後、完成品メーカーの発注先が関税率の低い海外に取って代わられるのでは」と不安を口にする。別の企業は「関税の上乗せ分を押し付けられないか心配」と話し、政府には「中小の賃上げにつながる施策を充実してほしい」と要望した。
今月11日、中国への日本産牛肉の輸出が24年ぶりに再開される見通しが明らかになった畜産関係者は今回の報道に胸を膨らませる。「国には和牛の国際競争力の維持・向上につながる施策を期待したい」と語った。老舗酒造メーカーの社長は「米国輸出は数%程度で影響はない」としながらも、「昨今の酒米高騰を何とかしてほしい」と不満を漏らした。
■日本の進路問う選挙
県内経済団体関係者によると、当面は「様子見・静観」とする会員企業が多いものの、生産拠点の見直しを検討する企業も出始めており、「行政に対して資金繰り支援など、迅速な情報提供を求める声が圧倒的に多い」という。
同関係者は今回の参院選を「日本の取るべき進路が問われる重要な局面」と位置づけ、「人手不足や価格転嫁、食料安全保障など目先の課題だけでなく、若者が将来に夢と希望を持てる中長期的な視点で政策議論してくれそうな党に1票を投じたい」と話した。










