<25参院選・争点の現場から>保育士給与 高い東京 人材流出、待機児童増に/都県格差
参院選は後半戦に。物価高や公共整備、東京都との生活格差などの課題を、それぞれの現場から報告する。
◇
自治体から支払われ、保育士の給与の原資になる「公定価格」。地域区分の支給割合は、川口市などの6%に対し、隣接する東京都足立区は20%と差が大きく、より給与水準の高い地域に人材が流出する傾向にある。県は7日、大野元裕知事が就任した2019年以降、単独・複数含め24回目となる保育士の処遇改善に係る国への要望書を提出した。
■財源の差2・9倍
保育の公定価格は、人事院の定める国家公務員の地域手当に準拠している。24年8月の人事院勧告では、国家公務員の地域手当を市町村ごとから都道府県ごとに設定する「大くくり化」や、級地区分の見直しが示された。保育の公定価格に適用されると、東京に隣接する地域では格差が14%から16%に拡大する。国は昨年末、今年4月からの保育分野への適用を見送ったが、現在まで見直しの時期や方向性は示されておらず、宙に浮いたままだ。
県こども支援課によると、現在、定員90人の保育所の年間運営収入を試算した場合、川口市と足立区で年間約1128万円の差があるという。保育士の賃金にも差が生まれ、人材を確保できずに労働環境が悪化し、離職につながる悪循環が起こりつつある。県南部を中心に、施設だけでなく保育士不足による待機児童が発生しており、保育士の確保が課題となっている。
担当者は「県でも支援策に取り組んでいるが、東京と同じようにはできない」と苦悩する。国が対応していない部分を自治体で補おうにも、住民1人当たりの地方法人関係税額は、東京と埼玉で2・9倍の差がある。「東京は財源がある分、いろいろな施策を打てる。財源の偏在で差が出ている部分もあり、地域区分と財源の両方で国の制度を見直してほしい」と訴える。
■園の特色生かす
保育園と同様、幼稚園でも公定価格の差による人材採用の課題を抱えている。全埼玉私立幼稚園連合会(松尾創会長)は、これまで全県で1回のみ行っていた就職フェアを今年から4回に拡大。各地域の幼稚園や就職希望者が参加しやすいよう、会場も東西南北に分散させた。
松尾会長は「特に県南は、人材や園児が東京に流れてしまう部分はある」と危機感をにじませる。一方で、「幼稚園は学校法人なので、建学の精神などもバラバラで各園に特色がある。地域の魅力などと合わせて押し出し、選んでもらえるよう努力していければ」と現場での取り組みを模索している。
就職フェアに参加した越谷市に住む大学生女性(20)は、家から足立区まで電車で15分程度だという。「大学の求人サイトで調べたら、東京と埼玉で初任給が3万~4万円違う。県内に通勤するのと時間が変わらないなら、東京も視野に入れようかなと思う」と都内への就職も検討。「園見学もこれからなので、最終的には雰囲気なども考えて決めるつもり」と話していた。










