埼玉新聞

 

<25参院選・争点の現場から>脅かされる食の支援 高まるニーズ、減る寄付/物価高

  • フードパントリーを利用し、食料品を受け取る親子=7日、越谷市

    フードパントリーを利用し、食料品を受け取る親子=7日、越谷市

  • フードパントリーを利用し、食料品を受け取る親子=7日、越谷市

 参院選は後半戦に。物価高や公共整備、東京都との生活格差などの課題を、それぞれの現場から報告する。

 参院選で大きな争点となっている「物価高」。コメをはじめとして多くの品目で価格上昇が続き、家計に大きな影響を与えている。生活困窮の家庭に食料品支援を行うフードパントリーも活動に苦慮しており、「食の安全網」が脅かされている。関係者らは「減税で少しでも家計が楽になってほしい」「安心して子育てができる環境を整えてほしい」などと悲痛を訴える。

 ■息子には何としても

 「食料品は全部が値上がりしていて、家計には大打撃」。7日に越谷市で行われたフードパントリーに参加した派遣社員の女性(49)は不満を漏らした。フードパントリーはひとり親家庭など、子育て中で支援が必要な家庭に食料を無料で配布する。女性はコメ5キロやレトルト食品、調味料などを受け取った。

 小学6年生の息子と2人で暮らしており、「息子が好きなものは何としても食べさせてあげたい」と語る。国の支援を望むものの、「給付金を配布したとしても、一時的にしかしのげない。自分たちが給付金の対象になっても、一部の人だけの給付なら気が引けてしまう」と複雑な胸の内を明かす。「減税の方が生活は楽になるが…」

 ■賞味期限間近が急減

 川口市の「川口幸栄フードパントリー」を運営する池田忠正さん(60)は、物価高による生活苦で「利用者の需要が右肩上がりを続けている」と話す。対応する市内のフードパントリーは3年前と比べて倍の7軒に増えた一方、原材料費の高騰などでメーカーが寄付する余剰の食料品は減り、品目は3年前から約半数に減少。特にこれまで一定数を占めていた賞味期限が迫っている食品が急減した。

 「格差を感じる機会も増えた。国が率先して格差をなくす仕組みをつくってほしい」と訴える。

 こうした状況に埼玉フードパントリーネットワークの草場澄江理事長(61)はもどかしさを口にする。「物価高とはいえ、食料は命にも直結する問題。子どもをおなかいっぱいにしてあげたいという親の気持ちに応えたいが、思うように食料品が集まらなかったり、ニーズの拡大にすぐに対応することができない」

 ■3年前も争点に

 物価高対策は3年前の参院選でも争点となり、問題は長期化している。今回、各党は現金給付や減税などの政策を打ち出しているが、戸田市の飲食店経営男性(38)は「食材だけでなく店舗で使用するあらゆるものが値上がりした。長期的に続けられるような対策をしてほしい」、蕨市の30代主婦は「税金を抑えて、手取りが上がるような仕組みを整えてほしい」と求めた。

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