投票率上昇も3割台 候補者乱立、選択肢増え/さいたま市長選・戦いを終えて(下)
清水氏が5選を果たしたさいたま市長選を振り返る。
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今回の投票率は35・78%で過去最低だった2021年の前回(28・70%)から7・08ポイントアップ。17年(31・44%)よりも4・34ポイント高く、13年の37・98%に近づいた。とはいえ、約65%の有権者が投票を棄権したことになる。社会調査研究センター社長の松本正生氏(埼玉大学名誉教授)は、さいたま市は他自治体からの転入者が多い土地柄もあり、「住んでいる人が地元に関心が薄く、市長選の重みを感じていないのでは」と分析した。
立候補者は13年4人、17年3人、21年2人で、今回は5人。主張やスタイルの異なる面々がそれぞれの政策を訴え論戦が活発に交わされたことで、有権者の選択肢が増え、投票率向上の一因になったことは確かである。
10万票弱を獲得し、次点となった沢田良氏はミニ集会を103回開き、2千人以上と対話。市民税72億円減税などの政策に加え多選批判を展開した。ただ沢田氏を支えた陣営の吉村豪介市議(維新)は「強い市長に勝つには1対1の構図に持っていくしかなかった。たくさんの人が立候補し今の市長に不満を持つ人が分散してしまった」と悔しがった。
沢田氏は落選後、地域政党の立ち上げを明言。代表を務め、2年後の市議選で10人の擁立を目指すという。自身は4年後の市長選に再挑戦する決意で「今の市政に対して徹底的に戦う姿勢を見せる」。
34歳の音楽家・小袋成彬氏は「政策を語るより泥くささを見せた方が票につながるというのは違和感があった」と、定番のスーツやたすきの着用を避け、選挙カーで名前を連呼しないスタイルを貫いた。
陣営関係者は一般的な選挙運動の効果を認めつつ「そのやり方で現職に勝てるなら、ずっと活動している沢田さんが勝てるはず。チェーン店ばかりの金太郎飴(あめ)みたいな街でいいのかと訴える時に、小袋さんの強みを生かした方が奇跡が起きると思った」。聴衆は増えた一方、票は伸びず小袋氏は限界も口にした。「集まるのはファッションや考え方が自分に近い人。それ以外の人には全然響かなかった」
他陣営が「衝撃的だった」と語るのが3位の西内聡雄氏が集めた5万5395票だ。
X(旧ツイッター)には翌日の街頭演説予定と応援弁士を必ず告知。字幕付き動画もアップし、一時はXのトレンド上位に入った。選挙戦後半の演説は公約最上位に掲げる外国人生活保護の即時廃止を中心に訴え、最終日夜のマイク納めでは「西内コール」が起きた。日増しに注目度が高まり、「今後も地元のために活動を続けたい」と語った。
市議を7期28年務めた経歴のある共産の加川義光氏は党公認で急きょ出馬。支持拡大に苦戦したが、夏の参院選に触れ「党の政策を知ってもらう機会はつくれた」と述べた。
5選を果たした清水勇人市長は27日の就任会見で「いろいろな世代の方が、それぞれの政策や考えを掲げて市民の信を問うことを前向きに受け止めている」と振り返った。










