埼玉新聞

 

医療拡充を訴え初当選 秩父市長選・新人の清野氏が923票差で制す 現職は自民・公明の推薦受けて組織戦も及ばず

  • 初当選を決め、喜びを爆発させる清野和彦氏=20日午後11時25分ごろ、秩父市宮側町の選挙事務所

    初当選を決め、喜びを爆発させる清野和彦氏=20日午後11時25分ごろ、秩父市宮側町の選挙事務所

  • 初当選を決め、喜びを爆発させる清野和彦氏=20日午後11時25分ごろ、秩父市宮側町の選挙事務所

 「秩父に新しい風を」と訴えた若き挑戦者が、政治経験豊富なベテラン現職を923票差で退けた。20日に投開票された秩父市長選。初当選した元市議で新人の清野和彦氏(41)は駅前で「若者集会」を開くなどで支持層を広げたほか、医師である久喜邦康元市長らの支援を受け、まちの大きな課題になっている「地域医療体制の確保」の打開案を打ち出し、共感を集めた。北堀篤氏(74)は、自民・公明の推薦を受けて組織戦を展開したが、前回市長選よりも獲得票数を落とす結果となった。

 20日午後11時15分ごろ、秩父市宮側町の清野氏の選挙事務所に初当選が伝わると、集まった支持者からは大きな拍手と歓声が湧き、若い新リーダーの誕生を祝福した。何度も拳を握り、喜びを爆発させた清野氏は「皆さんが『このまちを変えていきたい』『もっといいまちにしたい』と思った力がこの結果を生んだ。まちを良くするために私も全力を尽くす」と力を込めた。

 清野氏は大学卒業後、自然保護団体の調査研究員などを経て、2014年の市議選で初当選。「秩父のでっかい夢を実現させる」と、市議3期目で市長選に初出馬した。選挙戦では、医師不足解消に向けた広域の新病院建設や物価高騰対策などを強く訴えた。駅前では、子育て、若者世代約200人を集めて街頭演説を行うなど、エネルギッシュな活動が目立った。

 各所の街頭演説で、清野氏は「今回の選挙は投票率が変われば、結果が変わる」「皆さんに選挙に行ってほしい」と声を振り絞った。ふたを開けてみると、今回の投票率は前回より0・32ポイント減少。現職有利との声が一部有権者の間でささやかれたが、「刷新」が「継続」の票を上回る結果になった。清野氏は「地域医療構想などで協力をいただけた、久喜さんらの支援は大きい」と、選挙戦を振り返った。

 北堀氏は「自分の固定票をキープできなかった。この4年間で離れてしまった方がいたのは事実」と、敗因を挙げる。市議、県議を経て、21年に3度目の挑戦で市長に初当選。13、17、21年の市長選は1万4千~5千台の票を集めていたが、今回は1万4千台を割ってしまった。

 前回と違い、今回は両陣営ともインターネットを駆使した選挙戦も展開。連日、交流サイト(SNS)などを使って政策を訴え、浮動票の獲得に動いた。北堀氏は、「今回、初めてネット選挙に加わったが、若い世代と高齢世代の意識にギャップが生じ、相手候補者の勢いに押されてしまった」と語った。

 人口減少、少子高齢化が進み、多くの地域課題が山積する市政のかじ取りを新たに託された清野氏。医療・福祉の充実、経済とインフラの整備、スピードと実行力あふれるまちづくりの3本の矢(政策)を掲げ、「秩父のでっかい夢」をどこまで実現できるか、手腕が注目される。

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