埼玉新聞

 

恐怖…人質になった女性2人、日常生活を送れず PTSDで大きな音に敏感 発砲していた男に懲役24年「形ばかりの反省、述べるばかり」 「この歳で生きていられないでしょう」判決に無反応でうつむく

  • 蕨郵便局の裏手を警戒する警察官=10月31日午後3時40分ごろ、蕨市中央5丁目

    蕨郵便局の裏手を警戒する警察官=2023年10月31日午後3時40分ごろ、蕨市中央5丁目

  • 確保後の男を乗せた車両が蕨署に入る様子=10月31日午後10時46分

    確保後の男を乗せた車両が蕨署に入る様子=2023年10月31日

  • 男が立てこもった蕨郵便局の手前で盾を持ち警戒する警察官ら=10月31日午後4時10分ごろ、埼玉県蕨市中央5丁目

    男が立てこもった蕨郵便局の手前で盾を持ち警戒する警察官ら=2023年10月31日午後4時10分ごろ、蕨市中央5丁目

  • 蕨郵便局の裏手を警戒する警察官=10月31日午後3時40分ごろ、蕨市中央5丁目
  • 確保後の男を乗せた車両が蕨署に入る様子=10月31日午後10時46分
  • 男が立てこもった蕨郵便局の手前で盾を持ち警戒する警察官ら=10月31日午後4時10分ごろ、埼玉県蕨市中央5丁目

 2023年10月、蕨市の郵便局で局員2人を人質に取り、立てこもるなどして、殺人未遂や監禁致傷などの罪に問われた、無職鈴木常雄被告(88)の裁判員裁判で、さいたま地裁(佐伯恒治裁判長)は4日、懲役24年(求刑・同25年)の判決を言い渡した。

 判決理由で佐伯裁判長は一連の犯行が地域社会に大きな影響を与えたとし、「凶悪で大それた犯行で、責任は重い。極端な自己中心性には強い驚きと恐怖を抱かざるを得ない」と述べた。また、事件で生じた損害について被害弁償などが講じられていないことや、不合理な弁解で「形ばかりの反省の言葉を述べるばかり」として長期の懲役と判断した。

 弁護側はこれまで、病院や郵便局での発砲の殺意について「脅かしたり威嚇するためで、殺人未遂罪は成立しない」として懲役9年の量刑を主張していた。裁判所は弾道が人の近くを通過していることなどから「人命を奪いかねない危険極まりない悪質な犯行で、殺意があったと認められる」として主張を退けた。

 鈴木被告は最終意見陳述で25年を求刑した検察に対し、「(私は)生きていられないでしょう」と発言していた。判決の言い渡しを聞く際は反応を示さず、うつむきながら静かに聞いていた。

 判決によると、鈴木被告は23年10月31日、戸田市のアパートの自室に火を付け、一部を焼損。その後、同市の戸田中央総合病院で診察中だった医師と患者に拳銃で弾丸1発を発射し、それぞれ約3週間のけがを負わせた。さらに蕨市内の郵便局で付近にいた警察官に対して拳銃を発射。同局内に居合わせた局員2人を監禁し、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負わせた。

 鈴木被告は立てこもりから約8時間後の午後10時20分に突入した県警などに身柄を確保され、その後逮捕された。

■「この歳で25年はびっくりしませんか」(以下、論告求刑公判時の記事)

 2023年10月、蕨市の郵便局で局員2人を人質に立てこもるなどして、殺人未遂や監禁致傷などの罪に問われた無職の男(88)の裁判員裁判の論告求刑公判が29日、さいたま地裁(佐伯恒治裁判長)で開かれた。検察側は「犯行態様は悪質」として男に懲役25年を求刑。一方弁護側は懲役9年を求めて結審した。判決は6月4日。

 論告で検察側は、争点となっていた拳銃発砲時の殺意の有無について、拳銃の殺傷能力の高さや弾道などから「殺意があったと認められる」と指摘。「一連の犯行動機は身勝手で正当化する酌むべき事情もない」とした。

 一方弁護側は殺意について「驚かしたり威嚇するためで、殺人未遂罪は成立しない」と反論。高齢者特有の被害妄想があり、「アンガーコントロールができずに怒りのままに犯行した」と述べた。

 最終意見陳述で男は検察に対し、「この歳で25年はびっくりしませんか。生きていられないでしょう」と発言し、「いろんな人に迷惑をかけて反省している」と話した。

 起訴状などによると、男は23年10月31日、戸田市のアパートの自室に火を付け、一部を焼損。その後、同市の戸田中央総合病院で診察中だった医師と患者に拳銃で弾丸1発を発射し、それぞれ全治約3週間のけがを負わせた。さらに蕨市内の郵便局で付近にいた警察官に対して拳銃を発射。同局内に居合わせた女性局員2人を監禁し、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負わせたとされる。

 男は立てこもりから約8時間後の午後10時20分に突入した県警捜査員らによって確保、逮捕された。

■人質だった女性2人、日常生活を送れず(以下、初公判記事)

 2023年10月、蕨市の郵便局で局員2人を人質に立てこもるなどして、殺人未遂や監禁致傷などの罪に問われた無職の男(88)の裁判員裁判の初公判が26日、さいたま地裁(佐伯恒治裁判長)で開かれた。男は殺意について「そんな気持ちは一切ない」と述べ、起訴内容を一部否認した。判決は6月4日に言い渡される。

 検察側は冒頭陳述で、男が事件の前年に郵便局や病院とのトラブルがあったとして「報復しようと考えていた」と指摘。「犯行態様の危険性や犯行の計画性など、酌むべき事情もない」と述べた。

 一方、弁護側は発砲した理由を驚かそうとしたり、威嚇するためだったとし、「殺意はなかった」と主張した。

 検察側は証拠調べで、被告が約3カ月前から準備し始め、ポリタンクやガスボンベ、ガソリンを用意し、レンタカーを借りたと説明。立てこもりの被害女性2人は大きな物音に敏感になり、日常生活が送れなくなったことから厳しい処罰を望んでいるとした。

 88歳になる男は車いすに乗り、黒いジャージー姿で出廷。うつむきながら名前を小さな声で答えた。開廷中は終始落ち着いた様子で検察や弁護人の主張を聞いていた。

 起訴状などによると、男は23年10月31日、戸田市のアパートの自室に火を付け、一部を焼損。その後、同市の病院に向けて発砲し、診察中だった医師と患者にいずれも約3週間のけがを負わせた。さらに蕨市の郵便局で付近にいた警察官に対して発砲。郵便局で局員2人を監禁し、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負わせたとされる。

 男は立てこもりから約8時間後の午後10時20分ごろ、突入した県警捜査員らに確保され、逮捕された。
 

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