2022年6月12日(日)

<埼玉文学賞を語る>自分を磨き、審査に臨む 詩部門の審査員・北畑光男さん「物事から『何か』見出して」

「読む人を感動させる、深い作品が読みたい」と話す北畑光男さん

 2013年から「彩の国 埼玉りそな銀行 第53回埼玉文学賞」詩部門の審査員を務めている詩人の北畑光男さん(75)=上里町在住=は、30歳で同賞準賞を受賞している。応募者と審査員の両方の立場での経験を踏まえ、「詩を愛する人の大きな励みになる賞。だからこそ常に自分を磨き、審査に臨んでいる」と語る。

 岩手県岩泉町出身。酪農学園大学(北海道江別市)の文学同好会で詩に出合う。26歳の時、本庄市の県立児玉農工高校(現・児玉白楊高校)に教員採用され、埼玉に転居した。寄居町風布地区で、北国にはない、鈴なりみかんの情景を見て詩につづり、1976年に埼玉文学賞の準賞に輝いた。「埼玉の頂上のような賞で、憧れだった。だから準賞をいただいた時はうれしかったし、『これでいいんだ』と大きな自信になった」と振り返る。

 その後も高校で教鞭をとる傍らで詩作に励み、優れた詩集に贈られる富田砕花賞、丸山薫賞などを受賞。2017〜21年、埼玉詩人会会長を務めた。著作は10冊以上。「動物哀歌」で知られる岩手県出身の詩人・村上昭夫(1968年に41歳で死去)研究の第一人者でもある。「暗中模索しながら自分で自分を見つけていくのが詩。ずっと生命の姿みたいなものを追いかけてきた」と語る。

 1969年に創設された埼玉文学賞。県内在住者であれば題材は自由であるため、震災や新型コロナといった時代を映したものから、家族、恋愛、風土、歴史までバラエティに富んだ作品が集まるのが特徴だ。詩部門では、2021年は前年より56点増の331点が寄せられた。「入賞者は女性が増えてきたように思う」という。

 審査では、200〜300ある応募作を全て3回以上熟読するという北畑さん。「物事を観察するのは大事。でもそこで終わっている人が多い。イメージを広げ、その中に『何か』を見出してほしい。そこが文学になるか、単なる記述になるのかの分かれ道」と応募者にさらなる奮闘を促す。

 「埼玉にちなんだ作品がいいのだろうが、『いい作品』であればなんでもよいというのが本音。読む人を感動させる、深い作品が読みたい」と期待を寄せた。

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 きたばたけ・みつお 1946年、岩手県生まれ。「歴程」「撃竹」同人、村上昭夫研究「雁の声」主宰。日本現代詩人会理事、日本現代詩歌文学館理事・評議員。主な詩集に「救沢まで」(第3回富田砕花賞)、「文明ののど」(第35回埼玉文芸賞)、「北の蜻蛉」(第19回丸山薫賞)、「死はふりつもるか」(第13回埼玉詩人賞)など。上里町在住。

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