2022年4月21日(木)

信じられない…原発避難訴訟、原告ら怒り「やってもやらなくても事故は起きたので責任はない」はおかしい

判決を受けて会見する原告の瀬川芳伸さん(左)と弁護団の吉広慶子事務局長=20日午後4時ごろ、さいたま市浦和区

 東京電力福島第1原発事故で避難生活を余儀なくされたとして、福島県から県内に避難した被災者28世帯95人が、国や東電に計約11億円の賠償を求めた集団訴訟の判決が20日、さいたま地裁であった。岡部純子裁判長は、東電の責任について「個別の事情を考慮し、事故と因果関係の認められる精神的損害の範囲を検討すべき」と、63人に計約6500万円の賠償を認めた。一方、国の責任については「規制権限を行使せず重大な責務を果たしたとは言えないが、行使したとしても事故を回避できたことは認められない」と、被災者側の請求を棄却した。

 判決理由で岡部裁判長は原告側の精神的損害について、「帰還の見通しがつかない不安を抱え、生活基盤の再構築に苦労を強いられたのであるから、平穏な生活を著しく害され、身体的精神的な苦痛を受けたものと認められる」と説明。避難についても、対象区域からの避難は妥当とし、「専門的知見を有しない人にとって不安や恐怖を払拭できると直ちに言えないから、自主的避難等対象区域からの避難の相当性が一律には否定されない」と述べた。一方、国への請求は、2002年に政府が公表した地震予測の長期評価に基づき、「国は東電に津波の予見について規制権限を行使すべきだった」と指摘。しかし、「長期評価の見解により予見可能な想定津波と、実際に発生した津波の相違は非常に大きく、事故を回避できたとは認められない」と国の責任を否定した。

 原告側は原発事故で避難を余儀なくされ、多くの損害を受けたとして、国と東電に損害の賠償を請求。約8年間にわたり審理が行われてきた。

■原告ら「不当だ」

 東京電力福島第1原発事故で福島県から県内などに避難した住民ら95人が、国と東電を訴えた訴訟の判決が20日、さいたま地裁で言い渡され、国の責任は認められなかった。事故から11年、提訴から約8年。原告の避難住民らは「信じられない」「不当だ」と怒りをあらわにした。

 同日午前11時過ぎに判決が言い渡されると、さいたま市浦和区の地裁前に原告側の弁護士が「不当判決」の幕を掲げ、判決を見守っていた約30人の原告関係者から落胆の声が漏れた。

 同日午後、区内で行われた支援者などへの報告会と記者会見で、原告の瀬川芳伸さん(60)は「判決を聞いて胸がいっぱい。不当だ」と声を絞り出した。

 瀬川さんは福島県郡山市の中学校の美術教師。震災後の2012年6月に妻子をさいたま市に避難させて、現在は週に1〜2回、家族に会いに来ているという。国の責任が認められなかったことについて、「悪かったところを認めることをせず、実際に起こった被害を覆い隠してしまっている」と訴え、「(国の姿勢が)変わらないから避難生活はそのまま続けていかないといけないと感じざるを得なかった」と肩を落とした。

 福島原発事故責任追及訴訟弁護団事務局長の吉広慶子弁護士も判決は不当とし、今後原告らと相談の上で控訴する考えを示した。

 判決では、国が02年に公表した地震予測の「長期評価」に基づいた津波の予見可能性については認められたものの、それを踏まえた防潮堤設置などの対策がされていたとしても、実際には想定より大きな津波があったことから事故は防げなかったという判断がされた。

 吉広弁護士は「想定されていた津波と大きさの違いはそれほどない。対策をしてこなかったにもかかわらず、やってもやらなくても事故は起きたので責任はないというのはおかしい」と怒りをあらわにした。

 「判決を受けた時、自分はこれまで何をやってきたのかと思った」と声を詰まらせ、「損害を受けたことに対する賠償額もあまりにも低い。高裁での勝訴と金額の増額を目指して明日から戦っていく」と力を込めた。

 弁護団は原告について、提訴時は29世帯96人だったが、判決時は28世帯95人だったとしている。

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