2021年11月27日(土)

ただの田舎じゃない!注目高まる埼玉・日高、サブカル中心の作家が移住 ゆるゆると…新たな楽しみ探る

Tシャツは絵本作家長新太さんのデザイン。大の猫好きだが最新刊「犬と歩けばワンダフル」(集英社)で猟犬を取材中に「犬の魅力に目覚めた」という北尾トロさん

 サブカルチャーを中心に幅広いテーマで執筆を続けるノンフィクション作家の北尾トロさん(63)。30年近く暮らした東京を離れ、2012年に長野へ移住した後、昨年3月から埼玉県日高市に活動の拠点を移した。引っ越し後はコロナ禍続きだが「来たからには埼玉をゆっくり欲張りたいですね」と“第3の地”で、新たな楽しみを探っている。

 北尾さんは大学を卒業後、26歳でフリーライターとして執筆活動を始めた。「体験して書くのが基本スタイル」。その取材範囲は広く、多岐にわたる。固定電話やファクスがまだ幅を利かせていた頃、ネット古書店を開業して以降、さまざまなマニア的分野へ着目。法廷で繰り広げられる人間ドラマを描いた著書「裁判長! ここは懲役4年でどうすか」はベストセラーになり映画化され、傍聴ブームの先駆けとなった。

 そんな北尾さんは新たな「地元」となった埼玉について「裁判所がある浦和や、山田うどんの取材で通った所沢など、なじみのある場所もあり抵抗感は特になかった。ただ、いまひとつ印象が薄いというか、インパクトに欠ける感じはあったかな」。ニヤリと笑って率直に語る。

 以前移住した長野県松本市では、猟師へのインタビューがきっかけで狩猟免許を取得した。空気銃での鳥撃ちがライフワークになったものの、埼玉は狩猟エリアが狭く活動が難しい。「最初はちょっと拍子抜けしたけれど、家族の都合で縁ができたこの地。面白そうなことは何だろう」と持ち前の脳内サーチが発動し始めた。

 新型コロナの影響で家にいる時間が増え、妻の淳子さん(59)が精を出す借地農園の畑仕事を手伝う中、少しずつ地域との関わりが増えたという北尾さん。「手付かずの自然が豊かだけれど、高麗神社をはじめ、深い歴史もある土地。ただの田舎じゃなく、都内へも出やすい」と楽しげに話す。

 日高市周辺は近年、移住先として注目が高まっている。「今はまだ古民家カフェやオーガニックショップ、真面目に有機農業やエコ活動などに取り組んでいる人たちがポツン、ポツンと点で存在している感じ。そのつながりを、何らかの形で手伝えたら」。味わい深い各地のうどんやジビエ料理、また、飯能アルプスの低山ハイクや秩父霊場散歩など多方面へ関心を寄せつつも、まずは渓流があり美しい山並みに囲まれた生活の場へ、期待とエールを込める。「成功例を見て、まねしたい人が来る。その流れができれば、日高って面白いんじゃないかなぁ。いい場所に来たなと思いますよ」

 「全力でスローボールを投げる」―公式ホームページのタイトルそのままに、気負うことなく「ゆるゆると」新たな楽しみを模索中だ。

■北尾トロ

 1958年、福岡県生まれ。裁判傍聴、狩猟、町中華巡りなど、自らの体験をベースに幅広い分野で執筆・出版活動を行う。「僕はオンライン古本屋のおやじさん」「猟師になりたい!」シリーズ、共著「愛の山田うどん 廻ってくれ、俺の頭上で!!」など、多数の作品で人気を集める。

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